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2013.03.16

「お江戸ねこぱんち」第六号 岐路に立つお江戸猫漫画誌?

 四ヶ月に一度刊行の「お江戸ねこぱんち」の発売時期がこの春も巡ってきました。今号は定価を100円下げる代わりに付録をオミットと、ちょっとした変化もありますが、さて作品の方はいかがでしょうか。

「猫暦」(ねこしみず美濃)
 剣術家の父と二人で暮らす少女・おえいが、異国からやって来た人語を喋る猫・ヤツメと出会ったことで、天文の道を志していく姿を描くシリーズの第三話であります。

 もう三話と言うべきか、まだ三話と言うべきか、丹念に丹念に物語を展開していく本作。今回もその印象は変わりませんが、内容の方は、おえいと武者修行に旅立つ父との別れという、一つの大きな転機を迎えることとなります。

 江戸に残るおえいが、自分の望む道に進めるよう、それぞれのやり方で奔走する父とヤツメ。二人(?)は、これまでもおえいと何度か出会ってきた――そしてヤツメの力で大人の姿となったおえいと出会った――司天台の男・勘解由。その甲斐あって彼の助手という名目で、おえいは勘解由の助手という居場所を得るのですが…

 父を想う子、子を想う父、その二人を見つめる勘解由とヤツメ――淡々と、しかし細やかに描かれる彼らのドラマは、父が自分に黙って旅立ったと知ったおえいが、望遠鏡を手にする場面でクライマックスを迎えます。
 その望遠鏡を向ける先が指し示すもの…それは過去でもなく現在でもなく、未来――そんな彼女の決意がほろ苦くも美しく浮き彫りにされるラストシーンが、強く強く印象に残ります。

 ちなみに勘解由の姓は今回初めて登場したような気がしますが、やはりあの人物のようで納得です。


「猫絵十兵衛御伽草紙外伝 ニタ峠水虎の巻」(永尾まる)
 毎度お馴染みの「猫絵十兵衛」、「お江戸ねこぱんち」では外伝と題して、本編とは少し違った角度の物語を描かれるのですが、今回の主役となるのは、かつてニタが猫仙人を務めていたニタ峠の猫たち、なかんずく後任の猫又・清白であります。

 ニタ峠のある下島に済む水虎(河童の一種と思えばよいでしょう)に尻尾を取られ、ただの猫になってしまった福助。かつて十兵衛とニタが出会うきっかけを作った彼を助けるため、全面対決することとなったニタ峠の猫又と水虎。
 そこに割って入ったニタの裁断で、勝負は五対五の相撲対決となって…というのが今回の趣向です。

 本人、いや本妖怪たちにとっては真剣勝負なのですが、しかし猫と河童の相撲というのは、絵面的に何ともユーモラスで、どこかほのぼのとしたムードを漂わせているのがいかにも本作らしいところ。
 そんな中で一人殺気バリバリなのが、普段は冷静な清白というギャップも楽しく、クライマックスの一ひねりも含めて、やはり安心の面白さであります。

 個人的には、猫又の代表選手の一人、五徳が変じた五鉄の、強いんだか弱いんだかわからないところが、実にキュートに感じられてお気に入りです。


「今宵は猫月夜」(須田翔子)
 美剣士猫(?)眠夜月之進の活躍を描く人情活劇シリーズ、今回は月之進が、町で坊主に絡んでいた優男と出会う場面から始まります。
 優男が落とした小さな木片を拾った月之進は、捕らえられた男から、おはるという娘に危険が迫っていることを聞かされるのですが…

 普通の人間には猫にしか見えないが、人ならぬ者か人ならぬ者と縁深い者、という設定が実にユニークな月之進ですが、今回はそれが物語でなかなか面白く機能している印象。
 月之進を侍として見ることができる優男の正体は、そして彼が落とした木片は…実のところ、この展開は予想がつかず、クライマックスではなるほど、と大いに感心したところです。

 物語の流れの割りには悪役の行動があまりにセコい印象があるなど、内容的には粗い部分もなきにしもあらずですが、月之進の設定の面白さと、クライマックスの捻りで気にならなくなる――そんな作品であります。


 と、今回の「お江戸ねこぱんち」から三作品を取り上げましたが――裏を返せば、これ以外の作品はどうにも印象に残らない、というのが私の正直な感想であります(あ、四コマの「忍者しょぼにゃん」は別格で)。

 個人的には、一つの雑誌で三つ読むものがあればそれで良いか、とは思いますが、しかし「お江戸ねこぱんち」の場合、今号に限らず、永尾まるとねこしみず美濃が、漫画としても時代ものとしても、猫ものとしても図抜けている…というより他が追いついていない印象が強くあるのです(個人的には蜜子の作品が載らなくなったのが痛い)。

 執筆者を募集するなど、雑誌側としてもその辺りを補おうとしているやに感じられますし、冒頭に触れた値下げなど、雑誌として岐路に立っているようには感じられるのですが――その効果が早く出ることを期待したいところであります。


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