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2013.04.18

「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」第8巻 主従と親友と二人の少年

 天正遣欧使節5人目の少年・播磨晴信と、かつて信長の首を狙った最強の忍び・桃十郎の冒険行「サムライ・ラガッツィ 戦国少年西方見聞録」もこの第8巻でアユタヤ編終了。そして新たなる土地へと思いきや…?

 暴戻の王マンサムキアットに支配されたホンサワディーと、微笑みの国を求めるナレスワン王子のアユタヤの戦争が始まる寸前に割って入った晴信主従。彼らの一世一代の仕掛けにより、一転戦争は三対三の代表戦と変わり、晴信が敵の「喜悦」を、桃十郎が「憤怒」を倒して残るは頂上決戦のみ――

 そんな状況から始まったこの第8巻ですが、冒頭のエピソードで、この頂上決戦の決着が描かれることとなります。
 そしてそれを通して同時に描かれるのは、ナレスワンとマンサムキアット、そしてアユタヤの戦士・獅子のルンディンの過去の物語であります。

 今はナレスワンの腹心、そして何よりも親友(ダチ)でありつつも、かつてはマンサムキアットに対してもその言葉を使っていた時期があったルンディン。彼ら三人の過去に何があったのか――そしてそれが彼らの現在にどのような影響を与えたのか。過去と現在が交錯する中での決着は、アユタヤ編の締めくくりに相応しいものであったかと思います。

 そして今更ながらに気づかされるのは、このアユタヤ編のキーワードが「親友」であったことであります。それは、明大陸編の「主従」と対になる概念かと思いますが、そのそれぞれを代表するコンビを晴信と桃十郎に対比させる構造は、実にユニークであります。

 しかし、晴信と桃十郎は、単なる「主従」にも「親友」に収まる関係ではない――もちろん、そのそれぞれの要素はあるにせよ――ことは、本作の読者であればよくご存じの通り。
 それでは晴信は、いやそれ以上に桃十郎は何者なのか、という疑問も浮かぶかもしれませんが、それに対する答えとなるかもしれないものもまた、この巻では示されています。

 ナレスワンこそが真の強者と見て、祝勝の宴の陰で戦いを望む桃十郎。そんな彼を表するにナレスワンが使った言葉は「少年」――すなわち、「ラガッツィ」であります。

 本作のタイトルである「サムライ・ラガッツィ」とは、「クワトロ・ラガッツィ」、つまり天正遣欧使節の四人の少年をもじったものでありましょう。当然それは、五人目の少年たる晴信を指すものと、これまでは思ってきたのですが――
 しかし、桃十郎もまた「少年」であるとすれば、彼もまた「サムライ・ラガッツィ」であり、それはすなわち彼が晴信と実は等しい存在であるということになるのではないか…

 いささか飛躍した考えであるのは承知の上ですが、この巻のもう一つのクライマックスである日本からの刺客、最強の女忍び・ホトトギスとの死闘の最中で桃十郎が見せた表情を見ると、それなりに頷けるのではないか…というのは、もちろん私の思い込みではありますが。


 それはさておき、アユタヤ出発後は、転章という印象も強いこの第8巻。何よりも、大半のエピソードで晴信がダウンしているというとんでもない構成であったことも大きく、それはそれでいささか不満ではあるのですが――しかし、いよいよ一行は旅の第一の目的地(まだ第一だった!)ゴアに到着。

 そこで如何なる冒険が、いかなるコンビが晴信と桃十郎を待ち受けているのか…これは楽しみ、と思いきや、単行本のラストページでは、なんとタイトル変更の告知が!?

 上でタイトルに絡めて考察したばかりなので何だか複雑ではありますが、この辺りは色々と戦略があるということなのでしょう。
 内容自体はこの巻からの続きとのこと、新たな土地で仕切り直しというのも悪くないかもしれません。
 改めて、新たな展開を楽しみにしたいと思います。

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