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2013.04.04

「明楽と孫蔵 見参編」 痛快、帰ってきた快男児!

 森田信吾の時代バイオレンス劇画「明楽と孫蔵」が、コンビニコミックとして復刊されました。作者の代表作にして、時代劇画、チャンバラ劇画の傑作でありながら、今まで埋もれた状態にあった作品の復活に、ファンとしては大いに喜んでいるところであります。

 時は幕末、徳川将軍家のお膝元たる江戸で、相次ぐ血腥い事件の数々――何者かにより江戸に送り込まれ、恐るべき剣をふるう狂剣士・凶剣士たちの前に立ち塞がるのは、規格外れの公儀御庭番・明楽伊織と、配下の老忍び・孫蔵。
 暴力には暴力で、剣には剣で悪を真っ正面から叩き潰す快男児の大暴れを描く快作が、本作であります。

 何しろ本作に登場する悪役たちは、とにかく凶暴の一言。彼らが作中で繰り広げる悪行の数々は、とにかく一切の容赦なし、気の弱い人間であれば目を背けたくなるような無惨極まりないものであります。
 その点だけ見れば悪趣味な作品と感じられるかもしれませんが、しかしこれはバイオレンスものとしてはいわば定番のスタイル。暴力に対して、それ以上の暴力で叩き潰す――その爽快さが、本作の魅力の一つと言ってよいでしょう。

 しかし何よりも本作でたまらないのは、その剣術・武術描写の数々。
 スタイリッシュさとは無縁の、時に卑怯とすら見える超実戦的な技の応酬は、それを操る者たちが剣呑極まりない怪物たちであるだけに、ストレートな「強さ」「怖さ」を感じさせてくれるとともに、それを上回る伊織&孫蔵コンビのさらなる「強さ」「凄み」そして何よりも彼らの活躍の「痛快さ」を味あわせてくれるのであります。
(ちなみに、この辺りの実戦武術至上主義は、本作が連載されていた90年代の総合格闘技人気と無縁ではないのだろうな…と、今回の再読で感じた次第)。

 この第1弾では、相手の口の中に数珠を入れてから首を斬る念仏人斬りの丹直次郎、気に入らぬ相手であれば仲間も斬り捨てる御用盗・久須美の、二人の強敵が登場しますが、どちらも純度百パーセントの快楽殺人鬼。彼らの凶行の跡は、まさに酸鼻の極みという言葉がふさわしいものであります。
 それだけに、江戸っ子口調も板に付いた啖呵が気持ちいい伊織と、飄々としているようでいて凄みを感じさせる孫蔵のコンビが登場しただけで感じさせられる「もう大丈夫」感はかなりのもの。
 実は個人的にはバイオレンスものは苦手…というより好きではない部類に入るのですが、そんな私が本作を愛してやまないのは、まさにこのコンビの痛快さによるところ大であります。


 実は本作がコンビニコミック化されるのは、これで二度目。しかし別の出版社から刊行された前回は、私の記憶では最後まで刊行されずに終わっていたかと思います。
 是非今回は、この傑作をラストまで刊行して欲しい――さらに言えば、本作の前日譚であり、単行本が全巻刊行されなかった「御庭番 明楽伊織」も復活させて欲しいと、切に願っているところであります。


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