「魔界転生」(深作版) 最も知名度が高く、最も異色な
島原の乱で命を落としながらも、徳川家に対する深い恨みで復活した天草四郎。彼は細川ガラシャ・宮本武蔵・宝蔵院胤舜・伊賀の霧丸・そして柳生但馬守を魔界転生で復活させる。将軍家綱を操り徳川の世を覆さんとする魔界衆の陰謀に、柳生十兵衛は、ただ一人妖刀村正を手に立ち向かうのだが。
以前紹介したように、様々な媒体で、様々なリライト・リメイクが行われている「魔界転生」。その中でも、おそらくは最も知名度が高く、そして最も後の作品に影響を与えたと思われる――そして実はかなりの異色作であるのが、この1981年の映画版であります。
何しろ、無念を呑んで死んだ者を復活させる魔界転生という術の存在と、それにより復活した魔人たちに十兵衛が立ち向かうという基本的なシチュエーション、あとは転生する顔ぶれに共通項がある他は、冷静に考えればほとんど別物というのが凄まじい。
存在自体が架空である霧丸はもちろんのこと、原作での魔界転生の設定を考えれば転生できるはずもないガラシャが転生衆に含まれているというのは、厳しい言い方をすれば噴飯もの。
剣豪たちのオールスター戦という裏に、講談などで親しまれた剣豪物語のパロディという性質のあった原作から考えれば、この映画版は大きすぎる改変を行っているとすら言えるのであります。
が、それでは本作が面白くはないか、「魔界転生」として出来が悪いか、と言えば、もちろん答えは否であるのは間違いのないところでしょう。
30年以上前の作品ゆえ、今の目で見ると合成等苦しい部分はありますが、そんなものは全く小さいと思えるだけの、問答無用の迫力が本作は最初から最後まで充ち満ちているのですから。
その最たるものが、もはや伝説と言うべき、千葉十兵衛と若山宗矩の炎の中の死闘(さらに言えば、その少し前からの、裃姿で異常に速い剣を振るう若山宗矩の大虐殺)であることは言うまでもありませんが、そこに至るまでの、全編に漲る緊張感の凄まじさときたら…
父が人外の怪物と化したことを察知し、血相変えて弟に屋敷から脱出するよう叫ぶ十兵衛や、近づいて来ただけで村正の小屋が凄まじく鳴動する武蔵の描写からは、原作とは全く異なるものの、原作にも通じる(そしてもしかすると原作以上の)「怖さ」「凄み」が感じられるのであります。
さらに言えば、四郎が農民たちを扇動するのが佐倉の地であることに、佐倉惣五郎伝説に繋がるものを感じますし、おそらくは明暦の大火をイメージしているであろうクライマックスの江戸城炎上も、最初に火が付くのが振袖ならぬガラシャの打掛などという、本作独自の細かい部分も、改めて見てみれば面白い。
(ちなみに上で論ったガラシャですが、このクライマックスから逆算してみると、それなりの必然性というか、ドラマを感じられる存在であります)
そして何より、敵方の首魁に天草四郎を置いたことはこの映画版最大の工夫であり、そしてその後の「魔界転生」バリエーションに多大な影響を与えたものであることは、言うまでもありますまい。
原作では客寄せパンダ的存在であったものに強烈なキャラクター性を与え、十兵衛と並ぶ物語のもう一方の、いや十兵衛以上に強く物語を引っ張る核として設定された四郎の存在は、幕府に抗する怨念のドラマとして本作を成立させているのであります。
(もちろん、そこには沢田研二の存在感もあることは言うまでもありません)
後の「魔界転生」の幾つかが、復讐者としての四郎の存在により光を当てたものとなっていること――そしてそれが原作とはまた異なるドラマ性を与えていることを思えば、本作の四郎像が、原作者も意図しなかった色彩を原作に与え、「魔界転生」を新たに転生させた印象すらおぼえます。
…というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが、本作が「魔界転生」という作品を考えていく上で、欠かすことができない存在であることは、間違いありますまい。
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コメント
魔界転生をメジャー化した作品で、深作監督のオリジナル要素が映画をダイナミックにしていますね。魔界転生した剣豪を唯一切れるのが妖刀村正というのは、後の『ウィザードリィ』でのサムライの使える最強の魔刀ムラマサブレードの元ネタになったらしいですね。それを考えるとゲームにまで影響を与えた作品です。刀鍛冶(この作品では正宗の弟子という設定)の村正を演じたのは霊界オジサンで有名だった丹波先生!説得力のあるキャティングです(笑)。
投稿: ジャラル | 2013.04.10 12:43
ジャラル様:
個人的に一番最初に触れた魔界転生ですね…しかし本当に子供心にコワい作品であった一方で、村正片手に梵字を体中に書き込んで戦うというのはちょっと格好良いと思いました。
しかしムラマサブレードの話は初めて聞きましたよ! やっぱり恐ろしい作品です
投稿: 三田主水 | 2013.04.15 01:09