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2013.05.18

「処刑剣 14BLADES」 背負ったスーパーウェポンの重み

 明朝の秘密警察・錦衣衛の指揮官・青龍は、宦官・賈からある密命を受けるも、その中で裏切りに遭い深傷を負う。親王と結んだ賈が玉璽を奪ったことを知った青龍は、護送屋に自らの護送を依頼し、賈の陰謀を阻むため砂漠に急ぐ。しかし親王の暗殺者であり、奇怪な体術を操る美女・脱脱が彼らを追う…

 極私的ドニー・イェン祭り、今回は2010年に公開された「処刑剣 14BLADES」(原題「錦衣衛」)であります。

 タイトルだけ見ると「セブンソード」をどうにかしたような印象ですが、もちろん内容は無関係。原題の錦衣衛は明王朝のいわば特務機関、秘密警察であり、この時代を舞台とした作品にはしばしば(悪役として)登場する存在です。
 ドニー・イェン演じる主人公・青龍は、この錦衣衛の指揮官であり、最強の男。そして彼がその座にある証として与えられたのが14BLADES――大明十四刀なる必殺武器であります。

 この大明十四刀、見かけは細長い木箱ですが、中に収められているのは、その名の通り14本の刀――うち8本は尋問用、うち6本は(自決用も含めた)処刑用の刀。箱には絡繰りが仕掛けられ、刀を機械的に射出することも可能であれば、鎖を打ち出して移動に使用することも可能と、攻撃・防御・移動に使えるスーパーウェポンなのです。

 物語の方は、青龍が周囲から裏切られながらも、なおも錦衣衛の誇りを貫き、任務を全うするために、奪われた皇帝の玉璽を追って死闘を繰り広げることとなります。
 その追跡行に絡むのは、彼が身を隠すために雇った「正義護送屋」の頭目の一人娘・喬花に、玉璽を用いて叛乱を目論む親王の義理の娘であり、異様な体術を操るエキゾチックな美女・脱脱、そして青龍に手を貸す盗賊団・天鷹幇の頭目・砂漠の判事。
 錦衣衛として生き残るために兄をはじめとする仲間たちを葬ったという過酷な過去を背負った青龍は、この旅の中で彼女たちと出会い、戦い、別れる中で、その堅い殻に籠もった心の内を、徐々に見せていくことになります。
(気のせいか最近、過去を背負ったバカ強いダメ人間を演じることが多いドニーさんですが、本作の青龍もその延長線上にあると言えるでしょう)

 もちろんその過程で描かれるのは、ド派手なアクションの数々。ワイヤーワークやCGもかなり使われますが、しかし大事なのは、それをどう使うか。
 本作においては、例えば先に述べた大明十四刀のギミックを用うことによって、空間を縦横に使ったアクション設計が行われていたり、脱脱が着物を一枚一枚脱ぎながら攻撃を躱し、そしてまた躱しながら一枚一枚着ていくという超絶軽功描写(もっともCGの出来は今ひとつですが…)などが、強く印象に残ります。

 特に大明十四刀は、単に武器というだけでなく、青龍にとっては彼の人生の象徴とも言うべき存在。ラストで彼がその十四刀を用いて見せるある行動は、まさに彼の内面あってのものと言えるでしょう。

 登場キャラの方も、主人公のライバルが妖艶な美女という意表を突いた脱脱や、最近のFFみたいなコスチュームデザインの砂漠の判事など、「今の」武侠アクションというものを感じさせるものであります(さすがに錦衣衛のコスチュームはあまりいじれませんでしたが…)


 しかし、全体を通してみると、ドラマ面で不満が残るのも正直なところ。
 ヒロインがテーマ的なものを台詞にして言う時点でどうかと思いましたが、青龍も、中盤近くまで何を考えているのか実にわかりにくい(身分を隠しての逃避行のはずが、山賊に錦衣衛の証を見せるのはどう考えても平仄に合わない…)。

 先に述べたとおり、アクションとキャラクターに光るものがあっただけに、それだけでOK…と言いたいところなのですが、やはり(当たり前ですが)ドラマでひっかかるのは残念なところ。複雑なドラマを作ろうとしたのが逆効果だった…というのは厳しすぎる評価でしょうか。


 ちなみにもう一つ気になったのは字幕の訳語。「護送屋」はやはり「ヒョウ局」(ヒョウは金+票」で、「判事」は「判官」でないと…というのは、武侠好きの繰り言かもしれませんが。

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