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2013.05.22

「曇天に笑う」第5巻 クライマックス近し、されどいまだ曇天明けず

 明治の琵琶湖畔を舞台に、300年に一度復活する怪物・オロチと、曇神社の三兄弟の運命を描く「曇天に笑う」の第5巻が発売されました。掲載誌の方では最終回を迎えたとのことですが、その前段階たるこの第5巻の方では、起承転結の「転」にしては、あまりに転転転と気になる展開が連続であります。

 オロチが復活する際にその身に宿る「器」として処刑された曇兄弟の長男・天火。しかしその後も、オロチ復活の証とされる曇天は晴れることなく…と思いきや、真の器は天火ではなく、次男の空丸だった! という衝撃的な展開で終わった前巻。
 衝撃的といえば、天火が実は生きていた、という展開も十分以上に衝撃的だったのですが、それを上回るヒキであります。

 さて、5巻冒頭で語られるのは、何故死んだはずの天火が生きていたのか、そして何よりも、彼の身に現れたオロチの器としての兆候は何だったのか…の謎解きですが、これがもう「なるほど!」の連続。
 意外な、しかし納得の真実に唸り、そしてその陰の天火の覚悟に打ちのめされ…これだけでもう満腹に近いのですが、しかしまだまだこれは序の口、であります。

 天火が再び立ち上がった一方で、絶望に沈んでいるのは空丸。ようやく天火を失った悲しみから立ち上がり、新たな師匠や仲間、同居人を得たと思いきや、実は自分がオロチ! というのでは、それで絶望するなという方が無理ですが…

 しかしここで嬉しいサプライズとなったのは、今の空丸の師であり、かつての天火の親友であり、そしてオロチとその器を討つ特務部隊・犲の隊長であるはずの安倍蒼世の態度であります。
 一度は天火と志を同じくしながらも、オロチの器の処遇を巡って袂を分かった蒼世が、天火の弟の危機を前に…というのは泣かせる展開。

 そしてここで、空丸にとって一つの希望となる存在が…とくればさらに盛り上がるのですが、あにはからんや、ここでこの巻の、いやある意味この物語最大のどんでん返しが待ち受けているとは――
 こればかりは詳細を明かすわけにはいきませんが、ここで描かれるのは、あまりにも意外すぎるある人物の裏切り。
 冷静に考えれば納得はいかないでもないのですが、しかしここで! このタイミングで! と、一気に奈落に突き落とされた気分にさせられること間違いなし、であります。


 それにしても本作は、第1巻の時点では物語がどこに向かっているか、まるでわからなかったのですが、それが物語が進むにつれて全ての登場人物、全ての要素がパチリパチリと繋がり、ここに至り一つの巨大な伝奇絵巻が生まれた感があります。

 曇三兄弟、犲の面々、獄門処の住人たち、そして600年前からの因縁に繋がれた者たち――
 果たして彼らの運命がいかなる結末を迎えるのか、今はそれを知りたい気持ちが強すぎて、冒頭に述べたとおり一足先に最終回だけ読んでしまうべきか、真剣に悩んでいるところなのです。


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