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2013.05.08

「忍剣花百姫伝 7 愛する者たち」 重なりあう二つの絆、繋がっていく命の物語

 天の磐船の力により開いた地獄の七口より溢れ出す魔物たち。五鬼四天の忍びたちが総力を結集して戦う中、花百姫と八忍剣は、何処とも知れぬ砂漠の世界――魔王が支配する異世界に転移する。花百姫が、八忍剣が満身創痍の戦いを繰り広げる中、ついに語られる魔王の正体。果たして花百姫の運命は…

 魔道を用いて様々な時代に侵攻する魔王と、運命の姫・花百姫(捨て丸)と伝説の神宝を持つ八忍剣の戦いを描いた一大戦国ファンタジー「忍剣花百姫伝」、文庫版の刊行もこの第7巻でついに完結しました。
 毎回毎回、あまりの面白さに、文庫版の刊行を待つことなく、単行本版で読んでしまおうかと思いつつ、いやいや我慢した方が喜びは大きい、と待ってきたのですが…それだけのものがあった最終巻であります。

 太古に地球に墜落した天の磐船の復活に伴って開いた魔界の扉・地獄の七口から溢れ出す魔物たちが各地で侵攻を始めた中、神居山で行われる五鬼四天の星祭り――
 何かに引き寄せられるようにその場に集まった捨て丸と(霧矢を除く)八忍剣は、祭りのクライマックスに巨大な力に巻き込まれ、最後の時空移動を行うこととなります。

 一面が砂に覆われ、夜毎現れる魔物たちによって人間が地上から駆逐され、地下に住みついたその世界――何処とも知れぬその世界に辿り着いた捨て丸は、先に魔王を追ってこの世界に着いていた霧矢を追い、魔王の居城に向かうのですが――!


 と、これまでも時空を幾度も超えつつも、最後の最後で超古代とも遠未来ともつかぬ(おそらくは中近東の)世界まで飛んで見せた本作。そこで繰り広げられる最後の戦いの中で、気付く限りほとんど全ての伏線が解消されていくこととなります。
 そんな状況ゆえ、具体的な内容について触れるのが大変難しいのですが、単なるキャラ立てと思ってきた要素にまできっちりとその背後の真実が描かれるなど、語るべきものは全て語られた、という印象。質・量ともに、まさにラストに相応しい内容であると断言して良いでしょう。

 正直なことを言えば、魔王の真の目的は最近のエンターテイメントではお馴染みのものではありますし、愛が全てを救うという展開は、すれっからしのおっさんにとっては少々気恥ずかしいところはあります。
 しかし、これまで描かれてきた物語を考えれば、それは大いに意外であると同時に、確実にそれまでを踏まえたものであることであることは間違いありますまい。
 特に後者は、結末に――今回の文庫化において新たに書き足された結末において、より大きな意味を持って感じられます。

 時空を超え、時には過去に、時には未来に舞台を移すという、時代ものとしては反則に近い形で展開してきた「忍剣花百姫伝」。
 しかし、これまでの巻の感想でも繰り返し述べてきたように、時空を超えることによって、本作は時の流れに沿って繋がりあう人と人との絆の姿を、俯瞰的に描く効果を上げてきたのであります。

 その絆は、花百姫と周囲の人々を繋ぐパーソナルなものであると同時に、全時代的・全地球的な人々を繋ぐものでもあります。しかしこの最終巻の結末において、その二つの絆の在り方――時代ファンタジーとしての本作と、少女の成長物語としての本作は、美しく重なった姿を描き出します。
 人の想いが続く限り、人の命も繋がっていく…それが本作のたどり着いた絆の在り方であり、そしてどれだけ時空を飛び越えようと繋がり続けるその絆を描ききったことが、時代ものとしての本作の意味であり、価値であると申せましょう。


 これまでも綿々と描かれてきた児童向け時代冒険物語――過去を舞台とした物語を通じて、未来に向かう子供たちに伝えるべきものを描くこれらの物語の、その最先端に位置するものとして、本作は見事に完結いたしました。
 そしてそこに記されたものは、子供たちだけではなく、大人たちにとっても意味を持つものであると、強く感じるところです。

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