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2013.05.10

「絵巻水滸伝」 王慶篇完結、そして最終章へ…

 ある程度切りの良いところで…と考えてしばらく取り上げてこなかった「絵巻水滸伝」ですが、先月更新の第百六回をもって王慶篇が終幕。いよいよ次回からは最終章に突入とのことで、ここで一度振り返っておきたいと思います。

 原典の基本的な展開はきっちりと押さえながらも、現代の読者にとっては疑問な部分、盛り上がらない部分には大胆なアレンジを加えて展開してきた「絵巻水滸伝」。
 原典でいう七十一回以降――百八星が集結した後に、彼らが国からの招安を受け、その命を受けて様々な勢力と戦うという、ファンにとってもある意味もっともスッキリしない部分に対しても、本作は「らしさ」を失わない一定の解を示してくれました。

 そこには、一つには官軍の総攻撃の前に相討ちに等しい形で梁山泊を失い、やむなくという理由があります。しかしその一方で、賊徒たちに苦しめられる無辜の民を救うという、よりシンプルかつヒロイックな理由が提示されるのが嬉しい。
(そして後者単独で示されればどこか空々しいところ、前者と組み合わせることで、一定のリアリティが生まれるのもまたうまい)

 そしてそんな梁山泊が戦う相手も、それなりの理想を持つ者も参加しつつも、トップが外道であったことにより賊徒と堕した「そうであったかもしれない梁山泊」とも言うべき田虎軍、そしてこちらは単純明快にどうしようもない悪役揃い、一言でいえばヒャッハー集団である王慶軍と、わかりやすい対比であります。

 特に、第二部に入って早々に伏線が張られていた田虎に対してどのような扱いになるのか、そもそも登場するのか? というこちらの勝手な心配をよそに登場した王慶は、(原典で数回に渡って描かれた個人エピソードも語られて)これまでありそうでなかった悪役造形だったのがユニーク。
 正直なところ、原典の王慶篇は田虎篇で参入した仲間たちの退場劇の要素が大きく、あまり内容的には期待していなかったのですが、しかしそれが、水滸伝という物語の性質上これまで描けなかった仲間たちとの死別というドラマとなって結実する点にもまた、感心した次第です。


 …しかし仲間たちとの死別は、これからより切実な、現実のものとなって梁山泊の百八星を襲うこととなります。
 いよいよ次回から最終章たる方臘篇に突入ですが、王慶篇の最終回にはそれに先駆けて方臘軍最強のあの男がいきなり登場。その不気味な存在感は、原典とはまた異なる意味で、恐るべき敵の存在を予感させます。

 そして次回予告に意味ありげに描かれた画の意味は…(原典ではなく沼田清版の順番というわけではありますまいが)
 再開が再来月というのはいかにも先過ぎるのが残念なところですが、悲劇がそれだけ遠のいたと思うべきでしょうか…いやいや。


関連サイト
 キノトロープ 水滸伝

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