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2013.05.25

「黒い将軍 晴れときどき、乱心」 狂人と間抜けたちの血と嗤いの饗宴

 飛田作之進が行方不明となって一ヶ月。その間、作之進の体はもう一つの人格である源之丞に奪われ、下総にいた。一方、作之進を探す太一らも、拝み屋坊主・隆心の力で彼に行き先を知り、後を追う。しかしその間にも、やくざ同士の争いに巻き込まれた源之丞は、周囲に血の雨を降らせようとしていた…

 二重人格の侍・飛田作之進/誉田源之丞を中心に奇人変人が入り乱れ、どこに向かうのか全く先が読めなかった「晴れときどき、乱心」の続編であります。前作同様、作之進/源之丞の存在に様々な人間たちが振り回されていくことになるのですが…そこに展開されるのは、ある意味前作以上にとんでもない世界であります。

 江戸で次々と怪事件が続くなか、お人好しだけが取り柄の武士・作之進の中で目覚めたもう一つの人格・源之丞。
 恐るべき剣技と凶悪無惨な性格を持つ源之丞に目を付けた怪忍者・桃山青海との死闘の末、完全に体の主導権を奪った源之丞が江戸から姿を消す場面で、前作は終わりを告げました。

 その源之丞、好き勝手に放浪した挙げ句、下総辺りに現れたのですが…そんな彼を捜し求める者も一人や二人ではありません。
 作之進を捜す者――彼の友や師、母親――と、源之丞を捜す者――青海の妹・お蝶と鼠小僧次郎吉――が、それぞれに作之進/源之丞の行方を求め、奔走することで、事態はいよいよややこしくなっていきます。

 というのも、超オレ様の源之丞は、周囲の思惑など全く構わず暴れ回り、そしてお人好し&ヘタレの作之進は、周囲の思惑に振り回されまくり…そんな作之進/源之丞が天保水滸伝チックなやくざ同士の争いに足を踏み入れたことにより、もはや事態は目も当てられないことに…


 と、本当にどこに転がっていくかわからなかった前作に比べると、物語自体はシンプルになった感のある本作ですが、作品の破壊力自体はむしろあがった印象であります。
 なにしろ、登場人物のほとんど全員が、狂人(その代表はもちろん源之丞)か間抜け(同じく代表は作之進)なのですから、まともにすむわけがない。
 前作が霧の中で車を飛ばしていたとすれば、本作は、ブレーキの壊れた列車に乗せられているようなもの。前作が「サイコサスペンス時代小説」だとすれば、本作はむしろ「サイコスラップスティック時代小説」と言うべきか――いやはや前代未聞の怪作、読み始めたら最後まで、おかしな連中の血と嗤いの饗宴につき合うしかないのであります。


 …が、どうしてもひっかかる、というかつっこまざるを得ないのは、タイトルとなっている「黒い将軍」。
 ここで詳しくは述べませんが、本作の終盤、あれ、このタイトルは…と思っていた頃に登場するその正体たるや――

 いやはや、さすがの私でも、これはない、と言いたくなるような無茶苦茶ぶりで、これはご都合主義の誹りは免れますまい。
 もっとも、冷静になってみると、ほかの作品は格別、本作においてはそれもありか、という気分に段々なってくるのが、本作の恐ろしいところかもしれませんが…


 そしてまだまだ物語は続きます。冷静に考えればほとんど解明されていない謎の数々に答えが示されることはあるのか…それはわかりませんが、次回もまた、こちらを色々な意味で驚かせてくれる作品になることはまちがいありますまい。


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