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2013.06.29

「シャウト 新選組」第1巻 悩みまくる彼と暴れまくる彼らと

 将軍の上洛警護と、無法地帯と化した京の鎮圧のために組織されることとなった浪士組に参加することとなった近藤、土方以下、試衛館の猛者たち。彼らとともに汗を流していた斎藤一は、思わぬことから旗本を斬ってしまい、勘当されて京の道場の門を叩く。剣の心、剣士としての生き方に悩む一は…

 幕末ものの人気キャラクターは、と問えば、まずかなりの確率で「新選組」の名が挙がることでしょう。これまで幾多の作品が描かれてきた新選組ものですが、そこに新たに加わった、元気の良さでは屈指の作品が、本作「シャウト 新選組」であります。

 …といっても、この第1巻の時点ではまだ新選組は結成もされていない状況。その前身(前々身)ともいうべき浪士組が結成されたばかりの段階ですが、しかし彼らの画面からはみ出すような元気ぶりは、実に気持ちが良い。
 後先考えぬ豪快な暴れん坊の永倉と、彼に輪をかけて猪突猛進の原田、御曹司的な風貌ながら何故か二人とウマが合う藤堂。沈着剛毅なようでやんちゃぶりは彼らと変わらぬ近藤に、優男ながらえげつない喧嘩殺法を見せる土方、そして道場では今ひとつながら実戦では異常なまでの強さを見せる沖田(微妙にヒラメ顔なのも楽しい)――

 本作に登場する後の新選組の面々は、いずれも我々がよく知る(つもりになっている)「あの」新選組のイメージをきっちりと踏まえてはいるのですが、しかしその言動のテンションと熱量は半端じゃない。
 浪士組参加希望者が集められた小石川伝通院でまずやくざ者たちと大喧嘩をおっぱじめ、京でも凶暴な勤王浪士相手に後先考えぬ大乱闘。武士道など薬にしたくともないような連中なのであります。

 しかしそれでも決して不快感なく、むしろ微笑ましさすら感じさせるのは、作画の下元智恵の明るくバイタリティに溢れた絵柄と、紙面から飛び出さんばかりの生きの良いアクション描写によるものでしょうか。
 作画は「かぶき姫」の下元智恵、原作は「かぶく者」のデビッド・宮原ときたら、これは幕末のかぶき者伝なのか? …というのは半分当たり、半分外れなのでしょう。


 というのも、本作の主人公は、上で触れなかった男――斎藤一。史実として伝わる通り、江戸で旗本を斬って京に逃れた一は、この時点では近藤ら試衛館組とともに浪士組に参加せず――しかし、同じ京で暮らすこととなります。
 本作における一は、あの沖田ですら「はじめを斬れる者などいない」と断言するほどの剣の申し子のような青年。半ば無意識のうちに相手の隙を見つけ出し、理法を外れたような技で斬る、いわば生まれついての人斬りなのであります。

 しかしそんな彼の、剣に対する自負は、京都到着早々打ち砕かれることとなります。京で頼った聖徳太子流(創作かと思いきや本当にあって吃驚)の道場主・吉田に、完膚無きまでに敗れた一は、剣の心とは何かという、ある意味根本的な思考の迷路に迷い込むことに…

 かくて、豪快に暴れ回る試衛館組サイドと、ひたすら悩みまくる斎藤一サイドと、両極端の色分けとなった本作。両極端といえば両極端、バランスが悪いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、その曲者ぶりが、私にとっては何とも楽しく感じられます。

 しかし、試衛館組と一と、二つの道は遠からず合流することになります。そこで両者がどのように混じり合い、そこにどのような化学反応が生まれるのか…
 おそらくは非常に珍しいマッチョ系悪役の殿内義雄、一種ダンディな切れ者として登場する芹沢鴨と、彼らを取り巻く面々も曲者揃いで、これはまた先が楽しみな新選組ものが生まれたものであります。


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