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2013.06.21

「信長のシェフ」第7巻 料理が語る焼き討ちの真相

 ドラマも好評のうちに終了しましたが、原作の方も相変わらず好調な「信長のシェフ」。前の巻では森可成の死と、本願寺を相手にした帝の御前での料理勝負が描かれましたが、この巻では、信長の事績の中でも後世の評価が大きく分かれるあの事件が描かれることとなります。

 その事件とは、比叡山延暦寺の焼き討ち――平安の頃から都を守護し、そしてその一方で巨大な権力として時の為政者に影響を与えてきた比叡山を、信長が焼き滅ぼしたというあの出来事であります。

 敵対者にとっては容赦しないという印象の強い信長ですが、我々にその印象を与えるのは、この比叡山焼き討ちと、天正伊賀の乱の際に伊賀を滅ぼしたことからでしょう。
 小説など題材になりやすいのは後者のようにも感じますが、しかし後世に、いや当時より衝撃的であったのは、間違いなく前者でありましょう。
 時には帝ですらその意向に配慮せざるをえなかった比叡山。物理的な力はさておき、信仰・信心という、当時としては決して無視できぬ巨大な力を滅ぼす――しかも女子供も残さず――ということがどれだけの衝撃を与えたことか。
 同時に、どう取り繕っても現代の我々から見れば虐殺としか言いようのない行為をどのように描くか――それは、大げさにいえば、全ての信長ものにおける試金石ともいえるでしょう。

 さてそれでは本作がこの延暦寺焼き討ちを如何に描いたかといえば――ケンの料理を通じて描くのは当たり前として、それを信長と家臣の間の想いのやりとりの形で描き出すのがユニークであります。
 例によって言葉少ない(今回その理由の一端が語られるのですが)信長と、今回ばかりはその真意を疑う家臣団と――そのきしみのきっかけとなったのが、森可成の死というのも面白いのですが、そこにケンの料理を絡めることで、本作ならでは信長の真意を、違和感なく浮き彫りにすることに成功していると感じます。

 その信長の真意、比叡山焼き討ちの真相は、甘いといえば甘い、都合がいいといえばいいのですが、しかし全くの作り事ではなく、それなりの根拠も説得力あるものであり、本作ならではの解釈として頷けるものでありましょう。

 ちなみにこの巻の冒頭のエピソードでは、あの松永久秀が登場。このタイミングで物語に顔を出したのは、やはり比叡山を焼き討ちする者と大仏殿を焼き討ちした者を対比するためでありましょうか…


 さて、信長包囲網に対し、強烈な反攻の烽火を上げた信長ではありますが、まだまだ苛烈な運命が信長を、その家臣たちを待ち受けているのは言うまでもないこと。
 ケンの正体を唯一知る「ようこ」と、信長の女忍・楓の接触も気になるところ、まだまだこの先も波乱含みの展開となることだけは間違いないところでありましょう。

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