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2013.07.08

「水滸伝」 第12話「林冲 風雪の山神廟へ」/第13話「豹子頭 梁山泊へ行く」

 今回も魯智深サイドと林冲サイドがそれぞれ描かれる「水滸伝」。林冲を牢城に送り届け、意気揚々と寄り道する魯智深。そして妻との再会を文字通り夢見る林冲の身には、さらに恐るべき運命が襲いかかることに…

 史進と別れ、再び旅を続ける魯智深。その途中、とある屋敷に一夜の宿を求めた彼は、この桃花村の長の一人娘に惚れ込んだ近くの山の山賊・小覇王周通が、強引に婿入りにくるという話を聞きます。ここで魯智深は、彼らのために一肌脱ぐのですが…
 比喩でなく本当に脱いじゃった魯智深。娘に化けて暗くした部屋のベッドの中で周通を待ち受けるのですが…何故そこで脱ぐ。原典では特に疑問も持たずに読んでいましたが、冷静に考えたら何故服を脱いでいたのか? …と、それはさておき、哀れ周通は幸せの頂点から、突然変な笑い声をあげる坊主にボコられることなるのでした。

 もちろんこれで収まるはずもなく、兄貴分と兵隊を引き連れてきた周通。かえってことを大きくした魯智深に屋敷の人々は顔面蒼白ですが、実はその兄貴分というのが、以前登場した打虎将李忠――というわけで、周通は不承不承娘を諦め、魯智深は李忠たちの山塞に招かれて数日過ごすことになります。
 が、そろそろ飽きてきた魯智深が出立するというので、李忠と周通は餞別のために一稼ぎしてくるというのを見送った魯智深、自分の手元のものを出さず、わざわざ奪ってくるとはなんてせこい奴らだと愛想を尽かし、卓上の銀の食器を強奪すると、塀を乗り越え去っていくのでした…

 この辺りはほぼ原典通りの展開なのですが、原典では納得できた魯智深の行動が、映像で見ると明らかに迷惑な酔っぱらいの狼藉しか見えないのがもの凄い。李忠たちがそれなりに礼を尽くしているのに対し、その場で食器を叩き潰して懐にしまい込んで逃げ出す魯智深はどう見てもやりすぎであります。
 この辺りの、どう見てもダメ人間で迷惑なんだけど、しかし見ている分に楽しい魯智深のキャラクターは、もちろんこれはこれで大いに正しい描写だとは思います。

 さて、弟分が楽しく旅をしている間、真面目に勤め上げていた林冲は、牢城から離れた秣置き場の番人に転属を命じられることになります。隙間だらけの小屋で寒さに震えつつ眠りについた林冲ですが――そこに現れたのは都に残してきた奥方(と侍女)。そこで妙に亭主関白的な強がりを見せる林冲ですが…もちろんこれは夢。はぁ…という感じの林冲を眺めつつ、ここで次回に続きます。

 さて、目覚めてみれば風雪吹き込んで何ともお寒い状態、酒を買って戻ると雪で小屋は潰れ、しかたなく近くの山神廟に泊まる林冲ですが…気づけばなんと秣に火がついて火災発生。驚く林冲の耳に入ったのは、陸謙と富安、そして看守の会話。これが全て自分を殺すための企みと知って怒った林冲が足下の岩を蹴飛ばすと、扉を突き破って看守に当たり一発KO。このいかにも武侠的アクションから、林冲怒りの大暴れが始まります。

 ここに至るまでの展開はほぼ原典通りですが、しかし原典では陸謙たち三人を殺して終わりだったのが、陸謙が連れてきた兵隊を相手に林冲は大立ち回り(さすがに「水滸伝 男たちの挽歌」ほどではないですが)。
 敵の人数は多いですが、しかしもちろん林冲の敵ではなく、敵の一人の体に槍を突き刺して、それを支点に攻防一体の残虐ファイトを見せる林冲はもう止まらない。富安を盾にした陸謙も、顔に似合わず達者な武術を見せますが、やはり林冲には及ばず、これまでの鬱憤を晴らすような連続攻撃に、ついに息絶えるのでありました。

 さて、原典ではここですっかりすさんだ林冲が、逃走途中に農民の酒を奪ったあげく、酔って寝込んだところを捕らわれるという好漢にあるまじき展開となるのですが、それはこのドラマ版でも同様。しかしこちらでは、林冲のその行動が、もう真っ当な人間として妻の元には帰れないという絶望と背中合わせの暴走として、むしろ痛々しく描かれてるのが、強く印象に残ります。この辺りはまた、林冲役の役者さんの緩急つけた演技の確かさに裏打ちされたものであることは言うまでもありません。

 さてかつぎ込まれた先が柴進の屋敷だったことで助かった林冲は、柴進の勧めで梁山泊に向かうことに。思ったより若い朱貴にもてなされ、梁山泊で王倫・杜遷・宋万と対面した林冲ですが、原典とは違い、王倫らが自分を快く思わないであろうことを予想しているのはさすがと言うべきか。
 だからといって、その通りになってもどうしようもない林冲が困惑する中、朱貴がまず王倫を諫め、杜遷と宋万の取りなしも入るのですが…というところで次回に続きます。
(ちなみに宋万のビジュアルが、一人だけ七十年代カンフー映画的なのにちょっとびっくり。杜遷はちゃんと立って自己紹介したのに、宋万は何もしなかったし…)


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