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2013.07.14

「江戸天魔録 春と神」第2巻 集結、対天魔遊撃隊

 徳川吉宗の庶子にして二丁拳銃を手にした美貌の少年・神寄と、彼を守る狂剣士・乙春が江戸を襲う天魔・天一坊と対決する時代ファンタジー「江戸天魔録 春と神」の第2巻であります。ついに明かされる神寄の出生の秘密の一端、そして復活する天一坊の本隊に対し、幕府側もついに動き出すことに…

 母を捨て、自分に醜い首輪をはめた父への復讐のために江戸に現れた少年・神寄。しかしその首輪を狙って彼の前に現れたのは、この世の物ならざる奇怪な妖魔――かつて幕府により地の底に封印されたはずの「天一坊」と呼ばれる天魔の一党でありました。
 謎の剣士・乙春に救われた神寄は、成り行きから乙春ともども小石川養生所の小川笙船のもとに身を寄せるのですが、そこにも敵の魔手は…

 というのが第1巻の展開でしたが、今回神寄の前に現れるのは、天一坊が主力部隊「四天」の怪人たち。この巻の前半では、その一人の口から、己のの母の正体、そして自分自身の存在の意味を聞かされ、神寄は激しく動揺させられることとなります。
 しかし、その絶望の中からかろうじて立ち上がった神寄は、ついに自らの意思で天一坊との戦いを決意、そして後半では、共に戦う仲間として、吉宗が組織した遊撃部隊「ナベルス」の面々と出会うのですが――

 そのメンバーというのが、既に第1巻から登場している小川笙船に加え、浄瑠璃作者の近松門左衛門、町火消のいろは鳶助…ユニークといえばユニーク、バラバラといえばバラバラの面子ですが、しかし目の付け所はなかなかに面白い。
 特に小川笙船は、小石川養生所設立のきっかけとなり、あの「赤ひげ」のモデルになった人物でありますが、意外とこの時代を描いた作品に登場することは少ない人物。それをここに持ってくるとは…と思わず感心させられました。
 またこの三人の中で唯一架空の人物であるいろは鳶助も、この時代に町火消が設立されたことを思えばそれなりに頷ける人物でありますし、何よりもこの手の妖怪退治ものに選ばれることが少ない(というかほとんど見たことがない)火消しがメンバーにいるというだけで楽しいではありませんか。

(ちなみに小石川養生所や町火消の設立と近松門左衛門の活動時期はギリギリ重なるのでこの設定はそれなりに史実と整合します。もっとも、近松はその頃は晩年のため、本作のような美青年ではないはずですがそれはご愛嬌)


 もっとも、個人的な好み――というより時代もの好きの目から見れば、やはり作中に中途半端に横文字が登場するのは大きな違和感があります(敵方が「天一坊」というネーミングであるだけになおさら)。
 完全にファンタジー寄りの作品にこういうことを言うのは野暮も承知の上ですが、これまで述べたように、材料のチョイス・調理法がなかなか面白いだけに、その辺りは本当にもったいないと感じるのです。


 物語の方は、全ての中心である江戸城に向かい、死闘の道中双六とも言うべき展開になる模様(一直線に向かうことができない理屈が物語上設定されているのもなかなか楽しい)。
 いわばここからが本編…というところで作者が体調不良で一旦中断となっているようですが、なるべく早い復活を祈っているところであります。

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