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2013.07.03

「つくもがみ、遊ぼうよ」 親と子と、人間と付喪神と

 深川で清次とお紅の夫婦が営む損料屋・出雲屋には、年月を経て付喪神になった品物が集まっていた。二人の子の十夜、そして幼なじみの二人は、物心ついたころから付喪神たちに親しみ、遊び相手になっていた。そんな付喪神とが引き起こす大騒動の中で、十夜たちは少しずつ成長していくのだが…

 畠中恵の「つくもがみ」シリーズの、だいぶ間をおいた続編、シリーズ第2弾であります。
 深川の損料屋(生活用品のレンタル屋)・出雲屋の人間たちと、店に住み着いた(?)付喪神たちのやりとりを中心にしたミステリ風味の連作という構造自体は前作と共通ですが、作品の雰囲気は、大きく変わった印象があります。

 前作の主人公である清次とお紅は、その後めでたく結ばれ、おそらくは十年以上が経った時代。清次たちの頑張りにより出雲屋もそれなりに大きくなり、一人息子の十夜に恵まれて――そして主人公は、この十夜たちの世代となります。
 こうして人間たちは成長し、代替わりしたとしても、変わらないのは付喪神たち…と言いたいところですが、実はこれが以前とは大違い。

 以前は、仲間同士のお喋りは大好きなくせに、清次やお紅を含めた人間とは全く口を利こうとしなかった付喪神たち。その声を聞くことはできても、清次たちが声をかけると途端にだんまり…という彼らとのコミュニケーションが、物語の大きな要素となっていたのですが――
 本作の付喪神たちは、すっかり人間、特に十夜たち子供に慣れて、ことあるごとに騒動を引き起こす賑やかな連中に。九十九年は生きているだけにプライドは高いのですが、基本的に脳天気で考えたらず、焼き芋やお菓子。そして十夜たちと遊ぶのが大好きというのは、これはずいぶんと変わったものであります。

 このあたり、一歩間違えると若だんなのところの妖怪たちとかぶりかねないのですが、しかしその辺りをかわしてるのは、五つの連作に共通するテーマの存在があってこそでしょう。
 本作で陰に陽に、程度の差こそあれ共通して描かれるテーマ――それは親と子の関係性、であります。
 それなりに嬉しいことも悲しいことも経験して、親となった清次とお紅。そんな親たちの想いを知りつつも、付喪神たちと小さな大冒険にチャレンジする十夜たち――二つの世代の姿は、子世代を前面に押し出した構造となってはいるものの、お互いの想いが時にぶつかり時にすれ違い、時にしっかりと結びつく姿を、作者のファンにはお馴染みのユーモアをたっぷりまぶした上で、暖かく微笑ましく描き出すのであります。

 思えば、前作は男と女の関係性を描いた作品であったこの「つくもがみ」シリーズ。それから時は流れ、今度は親と子のそれに主題が移ったのは、むしろ当然といえば当然なのかもしれません。
 そして、前作と本作で大きく変わった付喪神たちの人間に対する態度も、こうした人間と人間の関係性の違いを写したものではないかと…そう感じます。

 だとすれば、いずれ書かれるであろう第3弾は…とついつい気の早いことを考えてしまったりもしますが、一つだけ間違いないのは、付喪神たちはこれからも変わらず在り続けるということでありましょう。
 変わらぬ付喪神たちが、今度はどんな顔を見せてくれるのか…それもまた楽しみなのであります。


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つくもがみ、遊ぼうよ


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