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2013.07.19

「明楽と孫蔵 友情編」「再会編」「決着編」 幕末御庭番の死闘、遂に完結!

 森田信吾の不朽の名作、バイオレンス時代活劇の金字塔たる「明楽と孫蔵」のコンビニコミック版もいよいよ後半戦。この「友情編」「再会編」「決着編」を以て全7巻めでたく完結であります。

 江戸廻り担当の御庭番であり、超実戦武術の遣い手である快男児・明楽伊織と、彼に仕える百戦錬磨の老忍び・孫蔵のコンビを主人公とする本作、こうして冒頭から完結まで、短期間に刊行されたものを通読してみると、その物語展開のバラエティに驚かされます。
 御庭番が主人公というと、一般には潜入がメインとなるのでは印象がありますが、しかし本作の場合、本作の場合はそれを良い意味で裏切る――というか、伊織はほとんど全く忍ばないのですが――形で物語が展開していくことになります。
 というのも、伊織と孫蔵の敵となる勤王の志士(というより狂/凶剣士たち)の任務は、将軍のお膝元である江戸を騒がせ、幕府の威信を揺るがせた末に、幕府を倒そうというもの。当然、敵の謀略も、様々な形を取ることになります。

 たとえば今回紹介する「友情編」で後半が描かれる女忍び・美国編などは、偽金によって江戸の町(特に商人)を大混乱に陥れる陰謀が展開する一方で、これまで幾度となく企てを潰してきた伊織への復讐のため、その親友・倉地を破滅させようとする企みが並行して描かれるのが何ともユニーク。
 もちろん美国も本作の敵キャラらしく、女性ながら…などという表現が生ぬるい怪物っぷりで、伊織とのラストバトルも空間を存分に使った本作でも屈指のトリッキーな死闘となっています。

 そしてそれに続く烈風隊は、個人的に本作で一二を争うくらいにお気に入りのエピソードであります。武術の師に会いに行った返りの伊織と孫蔵が、ある宿場町を占拠した烈風隊なる武装集団と遭遇。村人や旅人たち(その中には以前宇賀島三兄弟編に登場した町娘さやかの姿も)を人質に取った烈風隊に対し、伊織と孫蔵は密かに反撃を開始するのですが…

 と、いきなり一言で表してしまえば時代劇版「ダイ・ハード」と言うべき内容なのですが、烈風隊隊長の不気味な存在感やその真の狙いの見事さ、そしてそれに対して時に豪快に、時に陰湿に(!)反撃を食らわせていく伊織と孫蔵の活躍など、見事に本作ならではの味わいとなっており、まさに本作でなければ読めない痛快なエピソードとなっているのであります。
(特に、豪快極まりない手段で敵に一大痛撃を与えた伊織に対し、「よくやった」と言わんばかりに肩をポンポン叩いちゃう孫蔵というシーンは、本作でも一二を争う名場面かと)

 そしてその先、物語は一気に加速して結末へと突き進んでいくこととなります。
 新たな敵・大久保一蔵(言うまでもなく後の大久保利通!)の出現、新たな伊織と孫蔵の仲間たちの登場、伊織の恐ろしくも頼もしい理解者の退場――ラストは岩倉具視によるあの大陰謀にまで繋がり、怒濤の如く大団円へと向かうのであります。

 正直なところ、終盤はかなり急ぎ足となった印象もあり、物語の結末についても賛否が分かれるのではないかとは思いますが、これはこれで一つの綺麗な終わり方でありましょう。歴史の流れを考えれば、ここから先の物語は、なかなか痛快なばかりの物語とはいかないでしょうから…。


 何はともあれ作者の代表作、いや時代バイオレンス劇画の金字塔とも言うべき名作でありながらも長らく絶版になっていた本作がこうして復活し、今回無事にラストまで刊行されたことは、ファンとして欣快の至りであります(以前コンビニコミックで刊行された際はラストまで刊行されなかったので…)
 この復活を機に、本作の魅力を知る人が少しでも増えるように、そして単行本が最後まで刊行されなかった本作のプリークェルたる「御庭番明楽伊織」も是非ラストまで刊行されるように、祈っている次第です。


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