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2013.08.28

「妖怪博士の明治怪奇教授録」第1巻 知恵と力と、二つの妖怪退治

 時は明治、文明開化の時代にも根強く残る迷信を打破するために日本各地を旅する妖怪博士こと東日流六平太と、妖怪の存在を心から信じる助手の泊瀬武。妖怪の存在を巡って全く対照的な立場をとる師弟二人の旅の行く手に待つものとは…

 たなかかなこといえば、「破戒王 おれの牛若」「秀吉でごザル!!」など時代アクションも多いのに、これまでなぜか紹介できていなかった漫画家。そんな作者の最新作は明治を舞台とした妖怪漫画――なのですが、一ひねりもふたひねりもある、なかなかのくせ者であります。

 主人公の一人・東日流六平太は、哲学者ながら(哲学者ゆえ?)明治の世に蔓延る迷信に憤り、妖怪が起こしたという事件に首を突っ込んではその背後のカラクリを解き明かすことから、「妖怪博士」の異名を奉られた一種の変人であります。
 そしえもう一人の主人公で博士の助手である泊瀬武は、そんな師匠とは正反対に、妖怪の存在を心から信じ、そして妖怪と出会うことに憧れる――というより、自身も数々の破邪の力と知識を持つ、また一種の変人であります。

 言うまでもなく、東日流博士のモデルは、怪奇事件の調査を行い、妖怪や迷信といったものの正体を次々と暴いていったという明治の妖怪博士・井上円了でありましょう(作中で「真怪」というワードが出ることもあり…)。
 しかし本作の博士は随分と肉体派、決めゼリフの「迷信打破(バスター)!!」とともに、文字通り物理的に破壊にかかるのですから…

 本作は、そんな凸凹コンビが日本各地で妖怪事件の謎を解いていく…のではありますが、一つの謎を解いてめでたしめでたしとはなりません。
 東日流博士の豪腕で謎が解明されたかに見えたのも束の間、その陰に潜むのは人知を超えた真の妖怪の存在。毎回博士がタイミング良く(?)気絶したり眼鏡を壊したりしているあいだ、代わってタケルが様々な破邪の技で以て妖怪と対決する…というのが毎回のパターンとなるのであります。

 東日流博士の謎解きと、タケルの破邪の力…いわば知恵と力と、二つの側面から妖怪という現象を解体していくというのは、定番とはいえなかなか面白い趣向。
 妖怪を単なる奇怪な力の発現として描くのではなく、そこに一定の理と、人の情念の関わりを描くというのは、大いに頷けるアプローチでありますし、その二つの解決を凸凹コンビに振り分けるというのも悪くないのですが…

 全体としてみると、どうにもすっきりしない、というのが正直な印象があります。
 妖怪に挑むのに、単に力のみでなく、学問的に、あるいは心理的に挑むのはよいのですが、それが逆に民俗ものなのか、人情ものなのか、妖怪バトルものなのか…どちらともつかないあいまいな印象を与えるのです。
 少なくとも、帯で言われている「文明vs迷信」というテーマはかなり薄いと言わざるを得ません。

 この辺りのバランス取りは、ある意味ゴーストハンターもの自体が持つ本質的な難しさなのかもしれませんが…

 しかし、この第1巻の後半で語られる師弟それぞれの真の目的はなかなかに面白く、そこに軸足を置くことで、また違った印象となるのではないか、とも感じているところではあります。


 ちなみに本作にはパイロット版が存在しているのですが、この第1巻には未収録。
 内容的によくまとまっており、第1話として申し分ないように思えるのですが、それがあえて外されているのは、この回の題材が、連載版の本編の展開(具体的にはタケルの目的)に今後関わってくるためではないか…というのは、全く個人的な予想ではありますが。


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