「水滸伝」第16話「宋公明 晁蓋を逃がす」/第17話「王倫 同士討ちに遭う」
さてさて、だいぶ久しぶりのTVドラマ「水滸伝」感想であります。前回途中で終わった晁蓋たちによる生辰綱強奪から始まり、林冲による王倫粛正まで、一気に物語は動いていくのですが、原典通りの部分、原典と異なる部分がなかなかに興味深いのであります。
青面獣楊志が宰領して輸送する十万貫の生辰綱を狙う晁蓋と七人の仲間たち。晁蓋たちがナツメ売りに化け、白勝が酒売りに化け、いよいよ作戦開始――というところから始まる第16話、第17話ですが、基本的に内容自体は原典とほぼ同じとなっています。
呉用の策により楊志らにしびれ薬を盛ってまんまと生辰綱を強奪したものの、白勝がドジってことが露見し、それを知ってしまった宋江(ここまでが第16話)。
その宋江が密かに知らせてくれたおかげで捕り手から逃れた晁蓋一行は、梁山泊に逃れるものの、王倫に冷たくあしらわれることになります。そしてついに怒りが頂点に達した林冲の刃が王倫を…というように。
しかし、当然ながらと言うべきでしょうか、細部には異なる展開が見られます。そしてそれがまた実に興味深いのであります。
まず、白勝。首尾良く生辰綱を奪って引き揚げる途中、どさくさに紛れて刀など拝借している最中に、痺れたままこちらを見てる男の目に怯えるあまりに、男に刀を振り下ろす! いやはや、とんだ好漢ぶりに彼を処断しようとする呉用たちですが、晁蓋はあんなやつら皆殺しにしても構わん的なことを言って止めます。
この辺り、白勝の割りとシャレにならないヒューマンダストっぷり(助ける代わりに、二度と賭博に手を出さず身を隠していろと言われたのに、全く聞かずに結果捕らえられてゲロったことも含めて)も驚きますが、晁蓋の身内以外には異常に容赦ない性格にもまた吃驚。
ここで晁蓋の態度を見た呉用が、「この人はちょっと…」という表情を見せるのも、今後の展開を踏まえて見ると、なかなか印象的なのであります。
その他、身投げしようとした楊志を、風を起こして止めた(ようにも見える)公孫勝が、生きろと諭したり、朱仝が晁蓋を逃がすためにわざと一対一の対決を挑んだり(そしてわざと自分をぶん殴る)という辺りのオリジナル展開も面白いのですが、しかしなんと言っても圧巻は第17話後半の林冲でありましょう。
相変わらず王倫の下で鬱屈していた林冲ですが、晁蓋たちと出会って一気に弾ける…というのは先に述べた通り原典通りの展開ながら、このドラマ版では、その前日に林冲が柴進の使者から、妻が行方知らずで生死不明という知らせを聞いているという展開。
あの坊主、やっぱり全く役に立ってない…というのはともかく、おそらくはここで林冲は初めて、いつか良民として妻の元に帰るという望みを本当になくし、梁山泊に骨を埋める覚悟を決めたのでしょう。あるいは、ここでこの知らせを聞かなければ、自分が梁山泊を去っていたのではないか…そう感じるのであります。
そしてラスト、四阿での酒宴でついに怒り爆発した林冲は王倫に痛烈な前蹴りを一発! 土下座するような姿勢で吹っ飛ばされた王倫は、そのままとどめの一刀を受けるのですが、印象的なのはその後。
わざわざ四阿の屋根を破壊して(というか、武侠ドラマ的には、登場した瞬間に壊されるだろうと思っていましたが)、ようやく空が見えたと笑顔を見せ、愕然と、あるいは憤然としている杜遷と宋万(と朱貴)に声をかけます。
摸着天の渾名を持つ杜遷には、お前は天に触れたことがあるかと、雲裏金剛の渾名を持つ宋万には、雲の中に入ったことがあるかと――
それぞれの渾名を織り込んでうまいこと言った林冲を、杜遷・宋万・朱貴が頭領と仰ごうとしたところで次回に続きます。
「水滸伝」DVD-SET 1(ジェネオン・ユニバーサル DVDソフト) Amazon

関連サイト
公式サイト
関連記事
「水滸伝」第01話「洪大尉 誤って妖魔を逃がす」
「水滸伝」第02話「石碣村に七星が集う」
「水滸伝」第03話「九紋竜 東京を脱出する」/第04話「魯堤轄 翠蓮を助ける」
「水滸伝」第05話「拳にて鎮関西を打つ」/第06話「魯達 剃髪し文殊寺に入る」
「水滸伝」第07話「豹子頭 誤って白虎堂に入る」/第08話「逆さまに垂楊柳を抜く」
「水滸伝」第09話「大いに野猪林を騒がす」
「水滸伝」第10話 「林冲 棒を持ち洪師範を打つ」
「水滸伝」第11話 「智深 火をもって瓦罐寺を焼く」
「水滸伝」第12話「林冲 風雪の山神廟へ」/第13話「豹子頭 梁山泊へ行く」
「水滸伝」第14話「楊志 刀を売る」/第15話「智をもって生辰の綱を取る」
| 固定リンク

コメント