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2013.08.17

「大樹 剣豪将軍義輝」第2巻 宿敵登場、しかし…

 宮本昌孝の名作「剣豪将軍義輝」の漫画化である「大樹 剣豪将軍義輝」の続刊――あまちに鮮やかな紅い表紙に驚かされる第2巻であります。将軍とは名ばかりの義輝(義藤)が、剣の天稟を示し始める一方で、彼の修正の宿敵となるあの男が登場、早くも暗雲垂れ込める展開であります。

 幼くして足利第13代将軍となりながらも、その実体は傀儡同様、諸大名家の争いの間で京から落ち延びることも余儀なくされていた義藤。そんな彼が、個人で卓抜した力を持つ「剣豪」の存在を知り、剣に興味を持ち始めた折り、親しくなった犬神人の少女・真羽がさらわれ、彼女を助けるために妓楼に単身乗り込んだところまでが第1巻の物語でありました。

 この第2巻の前半では、義藤がその妓楼で、最初の師であり盟友となる鯉九郎と対面、彼の指導の下で剣の腕を上げていく様が描かれるのですが…しかし、足利将軍家を取り巻く状況はいまだ混迷の一途、義藤は八坂塔で、何者かに送り込まれた刺客たちと対峙することとなるのであります。

 そして後半で描かれるのは、こうした彼を取り巻く勢力の一つ、畿内から瀬戸内までを支配する三好長慶…に仕える松永弾正久秀の姿。
 戦国ファンであれば、久秀が後にどのような所業を働いたかはよくご存じでありましょうし、そして義輝とも浅からぬ――などという言葉ではすまされない因縁があることもまた。
 本作においても、久秀は義輝の最大の敵として現れることとなりますが、そのビジュアルデザインは、作中でも言及されるように、蝙蝠のようなその存在を踏まえてか、いささか人間離れしたものとなっているのはちょっと面白い(個人的には少々やりすぎの印象もありますが、案外「面白くない」キャラである久秀を立てるには、これくらい必要かもしれません)。

 しかし何よりも面白いのは、三好家の人間と対峙する中で徐々に明らかになっていくその人間性であり――さらに、同じく三好家に仕える者という設定で彼の前に現れた、明智十兵衛光秀との腹の探り合いであります。
 久秀とは対照的に見るからに怜悧な切れ者と見える光秀の存在は、しかし久秀と同様、この戦国乱世の象徴的なものであることは間違いなく、そしてそれだけに、そのファーストコンタクトに垣間見えるそれぞれのキャラクターが実に印象的なのです。

 とはいえ、一冊まとまったところで読んでみると、バランスがいいとは言い難いというのが正直なところ。
 上で述べたとおり、久秀は物語で大きなウエイトを占めるキャラクターではあるものの、後半ほとんど全く主人公の登場しない構成でよいのか…とは感じさせられます。少なくとも、「剣豪将軍」というワードから受ける印象とはかけ離れているなあ…と。

 もっともこの辺りは、原作ものにつきまとう難しさではありましょう(内容的には、相当に原作に忠実ではあります)。まだ剣豪将軍の物語は序章とも言うべきもの。ここから先の義輝の本格的な活躍に期待することとしましょうか。


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