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2013.08.12

「真・餓狼伝」第2巻 餓狼を支える血の絆

 ただひたすらに強さを求める餓狼たちが明治の世を舞台に激突する「真・餓狼伝」の好調第2巻であります。第1巻で勃発した丹波文吉と前田光世の激突はこの巻でも続行中、その一方で、丹波の過去と強さの秘密の一端も描かれていくこととなります。

 新興武術たる柔道で日本中にその名を轟かせた講道館の猛者たちを次々と襲撃し、倒してきた謎の少年・丹波文吉。
 その挑戦を真っ向から受けた前田光世との野試合は一進一退のまま展開していくのですが…と、ここで戦いの間に挟まれるのが、丹波文吉の過去の物語であります。

 江戸時代に隆盛を誇りながら、幕末の動乱の中で次々と継承者を失い、滅びる寸前となった武術・丹水流。その宗家の最後の生き残りこそが文吉の父・久右衛門だったのであります。
 が、その久右衛門は、到底武術家とは思えない、闘争本能をどこかに置いてきたような好人物。文吉にもこれからは武ではなく文の道だ、と学問を勧めるのですが…しかし、学問に勤しんでいたと思われた文吉は、底知れぬ強さと闘志を持った少年。それを知った久右衛門は、丹水流の鬼神の血が文吉にも流れていることを思い知ることになります。

 …と、ここで白状すれば、この「鬼神の血」というワードを最初見たとき、何とも嫌な気分になったものでした。
 武術武芸の世界で、一子相伝というのはある意味当たり前の話。そこにはもちろん、血筋というものが密接に絡んでくるわけですが…しかし格闘漫画の世界でいえば、「○○の血」というのは主人公補正の別名として便利に使われたり、あるいは主人公が戦いに身を投じる理由として安易に使われることも珍しくありません。

 少なくとも「餓狼伝」を冠する物語で、「丹波」の姓を持つ男だけは、「血」に頼って欲しくない…と思ったのですが、自分の浅はかさを思い知らされたのはそのすぐ後。
 本作における「丹水流の血」とは、言いかえれば父と子の絆――父一人子一人の家庭において、武芸の才能はないと言いつつも父が残した秘伝書から武芸を学ぶというのは、文吉にとっても久右衛門にとっても、この上ない交流と言えましょう。
 その剣呑な修行の姿も、麗しい父子の交流の姿…というのはさすがに言い過ぎかもzしれませんが、いずれにせよ、頭でっかちの父と、そんな父を敬愛しつつも容赦しない文吉の修行風景は、どこか暖かみとおかしみのあるものであったのは間違いありません。

 もっとも、その父が編み出し、子が繰り出す奥義がちと微妙なのですが、これはこれで微笑ましい。
 この辺りも含めて、あまり「餓狼伝」らしくないかもしれませんが、私はこの雰囲気は嫌いではありません。


 と、そんな父子の絆をしても強すぎるのが前田光世。果たしてこの戦いの決着は…連載の方は新展開に入っており、こちらの方も大いに気になる作品であります。


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