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2013.08.25

「ホック氏・紫禁城の対決」 名探偵、西太后と対面す

 日本から清に渡ったサミュエル・ホック氏。久しぶりに再会した古い友人が何者かに殺害され、事件解決に乗りだしたホック氏は、そこから清朝の秘宝盗難事件に巻き込まれてしまう。さらに紫禁城に赴いたホック氏は、そこでも奇怪な密室殺人と遭遇することに…果たして事件の背後の敵の正体は?

 ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と相打ちとなり、死んだはずのあの名探偵が、その後再び相棒の前に姿を現すまでの大空白時代に、日本に現れて国家的陰謀事件を解決していた! というユニークかつ心躍る快作「ホック氏の異境の冒険」の続編であります。

 ホック氏(とここではそのまま呼ばせていただきます)が、大空白時代にチベットを訪れていたことは、ファンであればご存じかと思いますが、本作はホック氏がその第一歩として上海の租界を訪れた場面から始まります。
 ほんのわずかな滞在のはずが、久しぶりに再会した友人が怪死を遂げ、さらに彼が清朝の秘宝の密売に関わっていたことから、ホック氏は英国の駐在武官ホイットニー、そして清警察の張警補とともに、事件解決に乗り出すのであります。
 上海、蘇州、紫禁城、万里の長城――さながら名所巡りの如く舞台を変えて展開していく事件の背後にいるのは、秘密結社青幇、そしてあの宿敵の…

 と、長編というボリューム、中国大陸という舞台にふさわしい大冒険が繰り広げられる本作ですが、なによりも印象に残るのは、随所に散りばめられた「らしさ」であることは間違いないでしょう。
 初対面のホイットニー氏の来歴を言い当てる場面、身よりのない少年たちを使っての操作、狙撃手への対処法(は、この後の作品ではないかいらん)など、シチュエーションもそうですが、ところどころで、ファンならお馴染みの要素を入れてくるのが嬉しい。

 その最たるものは、ホック氏を一連の事件に巻き込むことになる、彼の古い友人であるヴィクター・トレヴァーで…と、ここでファンであれば「おおっ」となるはず。
 トレヴァーといえば、作中の時系列で言えばホック氏の最初の事件である「グロリア・スコット号」の登場人物。同作のラストで、インドに旅立ち茶園で成功したと触れられる人物がここで登場するとは、なるほど地理的にも(同じアジアということで)、そしてホック氏が事件解明に乗り出す上でも、実にうまい設定ではありませんか。

 ただ、残念なのは、ミステリとしての面白さが、前作に比べると…という点でありましょうか。前作の、ホック氏だからこそ解けない謎、という見事な仕掛けに唸った身としては、本作の仕掛けは、正直に申し上げれば、さほどでもないように見えてしまうのです。
(もっとも、あくまでも前作に比べれば、であって、紫禁城での密室殺人のトリックは、見事にあの場あの時代ならではのもので感心)

 その辺りを補うのは、活劇としての面白さ、そしてホック氏を混沌たる清朝末期に放り込み、彼の目から当時の上から下まで、表から裏までの清国の姿を描き出してみせた点だと思いますが…


 本作の事件は解決したものの、まだ物語は続きます。今回活躍したトリオが再び登場するシリーズ第3弾「ホック氏・香港島の挑戦」もなるべく早く取り上げたいのですが…


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