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2013.08.08

「紳堂助教授の帝都怪異考 二 才媛篇」 バラエティ豊かな事件と才媛たち

 大正の帝都を舞台に、数々の魔道に通じた美貌の帝大助教授・紳堂麗児と、その助手の篠崎アキヲが次々と巻き込まれる怪事件を描いたシリーズ第二弾であります。今回は「才媛篇」と付されているだけに、各話に才媛が登場するのですが、しかしどなたも本作らしい一癖も二癖ある方ばかりであります。

 洋装を颯爽と着こなし、知性と気品に溢れた物腰、そしてもちろん容姿淡麗な美青年。女性に対してはあくまでも慇懃かつ洒落っ気を忘れない――そんな完璧な紳士っぷりを見せつつも、その一方でこの世のものならぬ魔道に通じたミステリアスな紳士。
 それこそが本作の主人公・紳堂助教授でありますが、そんな彼自身のキャラクターが引き寄せるのか、その周囲で起きるのは怪事件ばかり。作中でも否定しているように彼は別に探偵ではありませんが、勢い探偵役として事件の解決に挑むことになります。

 そしてその傍らで紳堂に献身的に助けながらも、彼の女癖の悪さには眉を顰めるのが助手のアキヲ「少年」であります。
 わざわざ括弧をつけたのは何ゆえかと言えば、実はアキヲ助手の正体は秋緒というれっきとした少女。縁あって助手を務めることとなった彼女を、紳堂が悪戯心から男装させて側に置いているという、なかなかにユニークかつちょっとドキドキの設定なのです(というか、紳堂助教授のあまりに高度な変態っぷりに驚く)。

 さて、そんな二人が本書で挑むのは4つの事件。
 紳堂の無二の親友・美作中尉の病弱な妹・春奈と、彼女と出会い意気投合したアキヲが誘拐事件に巻き込まれる「乙女の香り」
 旧華族の貫間家の当主のもとに届けられた脅迫状に紳堂が挑む「貫間邸同時多発的殺人未遂未遂事件」
 アキヲの叔母・時子との旅行の帰り、千住で一夜の宿を借りた先での幻想的な出来事「満月に桃」
 浅草の夜を騒がす奇怪な鵺と紳堂との対決「鵺」

 前作同様の4話構成ではありますが、しかしその内容は前作以上にバラエティ豊か。
 実は必ずしも「魔道」絡みの事件ばかりではなく、その意味では紳堂助教授が出馬するまでもない事件も含まれている(事実、第2話では彼自身が何度もぼやいているのですが)と言えるかもしれません。
 しかしどの事件も、紳堂とアキヲのテンポよく、そして時にニヤニヤとさせられるようなやり取りを通じてみれば、まさしく本作でなければ描けない物語であると感じます。

 そして本書のサブタイトルに付されている通り、各話に登場するのはそれぞれに個性的な「才媛」であります。
 儚げな美少女でありつつも、機械いじりなどを好む春奈。紳堂の馴染みのカフェーの女給から貫間家の女中となった町子。今で言うルポライターであり、紳堂ともワケありだった時子。
 いずれも時に紳堂をたじろがせるほどのバイタリティーを見せる彼女たちは、単なる紳堂の引き立て役に留まらない存在感を発揮するとともに、少年と少女と女の間に在るアキヲの仰ぎ見る存在として描かれているのが、何とも興味深いところです。


 ちなみに、前作において私が少々残念に思っていた、大正を舞台とする必然性、大正ものならではの味付けですが、そちらも本書においては随所で描かれているのが嬉しいところ。
 特にラストの「鵺」は、震災前の浅草の空を夜な夜な鵺が飛ぶという魅力的な設定に加え、(一捻り挟んだ後の)クライマックスでは、浅草十二階で紳堂と鵺が(これがまた度肝を抜くような描写なのですが)対決するという実にたまらない一編であります。
 今後も顔を出しそうな存在も登場し、今後のシリーズ展開にも期待させていただけそうなのです。


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