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2013.08.13

「にんにん忍ふう 少年忍者の捕物帖」 風魔の少年、お江戸の謎に挑む

 密かに山中で暮らしていた風魔一族の頭目の息子・風太郎に、父から近頃江戸で起きているという怪事件が抜け忍の仕業なら、始末をつけてこいという命が下った。父の命を果たすため、そして姿を消した母を捜すため、妹とともに江戸に出た風太郎は、深川で岡っ引きの下で働くことになるのだが…

 最近は歴史上の人物が次々登場する伝奇ものが多い印象の高橋由太ですが、本作は久々の(?)市井もの。といってもそこは高橋作品、ユニークなキャラクターが次々登場する賑やかな作品なのですが…意外なひねりも楽しめる作品であります。

 時は田沼時代、主人公・風太郎は遠い昔に滅んだと思われていた(しかししっかりと生き続いていた)風魔一族の頭目の子。そんな彼が、父から抜け忍捕縛の命を受けて江戸に出てくるのですが…暢気に田舎暮らししていた彼にとって、江戸は戸惑うことばかり。食べるために口入れ屋の戸を叩いた彼は、偶然そこで出会った岡っ引き・伝兵衛の下で働くことになります。

 折しも江戸では、侍の髷を次々と切り落としていく「ちょんまげ、ちょうだい」なる賊が出没。その探索に当たることとなった風太郎は、賊の正体が、剣術の達人であり、一年前に突然姿を消して江戸に出たという己の母ではないかと疑いを持つのですが、怪事件は続き、人死にまでが…

 という本作、腕は立つのにどこか抜けた風太郎をはじめとする、ちょっとおかしなキャラクターたちのやりとりで物語が展開していくのは、いかにも高橋作品らしい印象であります。
 その一方で、物語の展開や設定に、どこかアバウトな部分というか、読んでいてすっきりしない部分があるのはちょっと困ったもの…と思っていたらこれが間違いでありました。

 実はそうした部分のほとんどは故あってのこと。一種の隙に見えた部分がフェイクとして作用して、物語の各所に配置された謎たちを結びつけ――というのはちと大げさな表現かもしれませんが――最後にある美しい人の情を描き出して終わるのには、素直に感心いたしました。

 この辺り、最近の作者の作風とはちょっと違った、むしろ初期のミステリ色の強い作品を思わせる…というのも実はある意味当然、本作は作者がデビュー以前から暖めていた作品とのこと。
 回り回って原点に帰ってきた…というのは早計かもしれませんが、作者の作品の中では伝奇ものよりも市井ものを好む私としては大歓迎であります。


 もっとも、「ちょんまげ、ちょうだい」やタヌキに似た口入れ屋など、どこかで見たようなキャラ、どこかで聞いたような言葉がしばしば登場するのは、いかがなものか…ととは感じます。
 この点は先に触れた通り、本作の方が構想がが先、オリジンということになるようですが、やはり気になる点ではあります。

 いずれにせよ、本シリーズも次回作からは完全新作(という表現はもちろん正確ではありませんが…)。そこで何が描かれるかは、やはり気になるところであります。


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にんにん忍ふう: 少年忍者の捕物帖 (光文社時代小説文庫)

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