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2013.09.26

「かげろう闘魔変」 大江戸ゴーストハンターの最大の敵

 江戸を騒がす連続怪死事件。被害者の皮膚が透き通り、内臓が見えているという奇怪な事件に興味を持った南町同心の妹・渡来鞘香は、幼馴染みで女遊びに夢中の女装美少年「かげろう」こと景四郎を巻き込み、犯人捜しを始める。かの平賀源内まで絡む事件の行方は…

 今では完全に時代小説オンリーの印象のある鳴海丈が、今から約20年前に集英社スーパーファンタジー文庫で発表した(今で言うところの)時代ライトノベルであります。

 時は田沼時代、天下太平のお江戸で相次いで発見されたのは、皮膚の一部が透き通り、内臓が透けて見えるという奇怪な死体。さらにその周囲は何故か水浸し、そして華紙が散乱しているという謎めいた共通点に、奉行所もお手上げ状態となります。
 という状況で事件に首を突っ込んだのは、同心の妹で好奇心旺盛なメガネっ娘・渡来鞘香と、渡来家の巨漢中間・弥助。そして鞘香の幼馴染みで江戸有数の薬種問屋の一人息子にして、超が付くぐらいの女好きで絶倫、そして何故か女装美少年の「かげろう」こと景四郎――

 この奇人変人トリオが、平賀源内やら鞘香の兄・多十郎らとともに事件の真相に迫るも、犯人はなんと…というのが第一話「無防備都市」のあらすじであります。
 さらに、喉を食い破られて死んだ武士と、血の海の真ん中に着ていた人間だけが抜け出したような姿で残された着物が残されていたという奇怪な出来事を発端とする第二話「レッド・ムーン」と、本作は全二話構成となっております。

 と、このあらすじで大体おわかりかと思いますが、本作は一言で表せばゴーストハンターもの。江戸を騒がす奇怪な魔物に、景四郎と鞘香をはじめとする面々が戦いを挑むことになるのですが――

 その辺りの設定をはるか遠くに吹き飛ばしてしまうのは、全編に散りばめられたギャグ――それも時事ネタの数々。
 とにかく、体感で言えば全体の六割、いや七割(会話シーンに至っては九割)はギャグを言っているのではないか、というほどの分量であります。そしてそれが正直厳しい…

 いや、確かに20年前の作品を捕まえて、時事ネタがどうこう言う時点で間違っているのだとは思いますが(とはいえ、そもそも時代もので時事ネタというのもいかがなものでしょうか)、やはり今読むと相当きつい。
 しかも分量が尋常でないため、読んでいて本筋よりもそちらばかりが記憶に残ってしまうのは、これは本末転倒ではありますまいか。
 結局、相当に個性的であるはずの景四郎も、さまで目立ったキャラクターに感じられないほどでありまして…

 実のところ、二話とも登場する魔物はなかなかに個性的であります。
 第一話は言うに及ばず(倒され方はちょっと残念ですが)、実は第二話の魔物はお馴染みの存在ではありますが、日本では馴染みが薄い伝承を絡めることで、うまくキャラ立てしているのにも感心できます。
 それだからこそ惜しい…そう感じるのです。


 ちなみに景四郎の使う武術は、鳴海作品ではお馴染みの(?)神武威流闘術。作中では九段下に道場があると触れられており、時代は流れるものなのだなあ…と変なところで感心した次第。


「かげろう闘魔変」(鳴海丈 集英社スーパーファンタジー文庫) Amazon

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