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2013.09.06

「青竜の砦 爺いとひよこの捕物帳」 決戦、合流する二つの物語

 実に久方ぶりに、風野真知雄の「爺いとひよこの捕物帳」が帰ってきました。爺い――かつて徳川家康に仕えた伝説の忍び・和五郎と、ひよこ――駆け出しの下っ引き・喬太の二人が江戸を騒がす様々な事件に挑む連作シリーズですが…ここにシリーズは大きな転機を迎えることになるのであります。

 江戸の大火で父が姿を消し、叔父の世話で岡っ引きの子分、下っ引きとなった喬太。背は高いが度胸の方が追いつかない喬太ですが、偶然知り合った謎の老人・和五郎に助けられ、少しずつ成長していくこととなります。
 実は和五郎はかつて家康直属で活躍した凄腕の忍び。相棒のやはり老忍び・貫作とともに家康直々の命で軍資金十万両を守りつつ、江戸を見守っていたのでした。

 という基本設定の本シリーズですが、喬太の成長=事件解決がシリーズの横軸とすれば、縦軸となるのが喬太の父・源太を巡る物語であります。
 実は生き延びていた源太は、その銃の腕を買われて半ば脅されるように倒幕を狙う一味に引きずり込まれ、将軍狙撃を強いられるのですが…

 果たして源太は一味から逃れることができるのか、和五郎は一味から江戸を守ることができるのか、そして喬太は父と再会することができるのか――と、実に盛り上がるところで前作は終わったのですが、それからなんと三年! 前の巻の感想を読み返すと、その前は一年空いて長かったと嘆いていましたが、それどころではない期間です。

 実は本シリーズが刊行されている幻冬舎時代小説文庫では、この三年ほど同じ作者の「女だてら 麻布わけあり酒場」シリーズが十巻近く刊行されておりました。それを鑑みるに、もう続巻は望めないものと覚悟していたのですが…それがこうしてひさびさの続編を手にすることができたのは、実に嬉しいお話です。


 そしてその本作においては、縦軸横軸双方に、一つの決着が描かれることになります。

 一味から追われる源太を保護した和五郎は、一味を殲滅するために戦いを挑み――そして喬太は和五郎に一から十まで助けられずとも、自分自身の力で事件と向き合い、解決していくのであります。
 そしてラストでは、この二つの流れが合流、最後の決戦が描かれ、ここにシリーズは一つのクライマックスを迎えることとなります。

 そうした意味では実に美しい構成の本作なのですが――実は、二本の流れが途中までほぼ完全に枝分かれてしていた影響か、個々のエピソードはかなり薄い印象があります。
 さらに言えば、和五郎たちが頼もしすぎることもあってか、決戦の模様も緊迫感が今ひとつ…それもまた本作らしいと言えば言えなくもありませんが、やはりちともったいない印象は否めません。

 物語的には描くべきことはほぼ描いてしまった感はあり、続編は望み難いのかもしれませんが…明るい未来に向かって歩み始めた喬太の、その先も見てみたいな、という気持ちもあります。
(何よりも、和五郎が見つけたという十万両の財宝よりも遙かに大きいもの、その答えもまた、はっきりと聞いてみたいものであります)


「青竜の砦 爺いとひよこの捕物帳」(風野真知雄 幻冬舎文庫) Amazon
青竜の砦―爺いとひよこの捕物帳 (幻冬舎文庫)


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コメント

続編待ってます。

投稿: 上遠野 | 2015.03.17 12:27

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