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2013.09.05

「SAMURAI DEEPER KYO」応募者全員サービス上巻 帰ってきた漢(SAMURAI)たち!

上条明峰の「SAMURAI DEEPER KYO」、実に七年ぶりの新作であります。現在刊行中の文庫版KYOの書き下ろし応募者全員サービス、その上巻が手元に届きました。収録されているのは「鬼眼の狂vs.幸村編&四聖天編(前編)」、短編ではありますが、ファンであれば感涙ものの作品です。

 書き下ろしということで、タイトルは判明していたものの、内容の方はどうなるか全くわからなかった今回の書き下ろし。あるいは侍学園的な番外編かと思いましたが、いやいや直球ど真ん中、本編で語られざるエピソードにして、本編の補完とも言える内容であります。

 その一つ目のエピソード「鬼眼の狂vs.幸村編」は、本編のかなり初期――江戸での御前試合の直後、その晩の宿屋で、タイトル通りに狂と真田幸村が激突するのですが…これがむしろ紅虎と幸村の対決という趣が強い一編。

 狂と幸村の対決の前に、紅虎と、その正体が徳川秀忠であることを見抜いて絡んできた幸村の対決が描かれるのですが…
 自分の、自分たちの旅を邪魔する者と認識した幸村に対し、無意識とはいえ幸村がたじろぐほどの一撃を放つ紅虎も、驚きつつもその笑みを絶やすことなく「甘いねぇ三男坊」のセリフとともに必殺の一撃を放つ幸村も、実に「らしい」。

 「KYO」という作品において史実を云々するのは野暮の極みではありますが、それでも引っかかっていたのが紅虎(秀忠)と幸村の関係。今回の短編でも語られる通り、秀忠は関ヶ原の戦で散々幸村に恥をかかされているわけで、それをスルーして二人が行動を共にするというのはどうにも引っかかるところ(しかも本編の中で、幸村は後に紅虎を評価する言葉を残しているわけで…)
 その辺りを――もちろん分量の関係で撫でる程度ではありますが――フォローしてくれたのは、これは実に嬉しい趣向と感じます。

 と、 紅虎のことばかり触れてしまいましたが、狂に関しても(というより狂に関してこそ)、本作は「おおっ!」と言いたくなる視点を提示してくるのです。
 戦いの中で幸村が狂に対して放った、狂は徳川についたのかという言葉。これが単なる挑発に聞こえないのは、徳川だけが唯一狂に与えられるもの=唯一狂に無いものを徳川が持つことが、示されるからにほかなりません。

 それは一体何か、というのはここでは詳しく述べませんが、なるほど確かにその通り! と唸るほかない言葉であり、そして、本作がやはり時代もの、歴史ものに分類される作品であることを、再確認させてくれる言葉であることは間違いありません。
 そして本作の中では語られなかったそれに対する反論こそが、本作の終盤に語られるものであることを思えば、本作は単なるボーナストラックなどとは思えない、実に心憎い一編であると感じるのです。


 さて、もう一編の「四聖天編(後編)」は、本編の大体中頃、灯が登場して四聖天が揃った直後に、彼女(?)以外の面々が、ほたるが四聖天入りした時のことを振り返るというエピソード。

 狂監視の命を与えられたほたるが、野武士の襲撃を受ける村で狂と出会い…というこの前編の時点では、まだまだ内容を云々するのは難しいのですが、本編ではほとんど語られなかった(と私は記憶しているのですが)狂とほたるの出会いが語られるのは、なかなかに嬉しいプレゼントと言えるでしょう。

 これはお世辞抜きに申し上げますが、「KYO」本編を(特に単行本を)読んでいる時、常に感じていたのは、作者のサービス精神の旺盛さであります。
 読者が何を見たいか、何を期待しているか――その辺りをきっちりと踏まえて単行本のおまけページなどで応えてくれるのは、作者が良い意味でファン気質を残しているからではと感じていましたが、それはいまだに健在だった、と嬉しくなります。

 ちなみに「鬼眼の狂vs.幸村編」には、十勇士の揃い踏み(あっ、やっぱり一人いないか?)や、本編ではこの時点ではまだ姿を現していなかったアキラと十二神将も顔を見せていて、やはりサービス満点であります。


 書き下ろしの後半分である「四聖天編(後編)&壬生一族編」を読むことができるのは、まだまだだいぶ先のことになりますが、しかしこちらも大いに期待して良さそうと、今から楽しみにしているところです。


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