「神喰らい カミグライ」 神を喰らった者の旅
とある町で相次ぐ怪死事件。その直前に何者かに社を壊された大口真神の巫女・天音は、付喪神を求めて旅しているという少年・御影小太郎と出会う。既に社に神はいないと告げる小太郎に激しく反発する天音だが、彼女の前に事件の犯人が現れた時、彼女をかばったのは小太郎だった…
今月「おさきもち 大江戸妖奇譚」が発売される瀬上あきらが6年前に発表した短編連作シリーズであります。
主人公・御影小太郎は、かつて神を喰らってその力を手にし、暴走してケガレ神となった神を喰らう「神喰らい」と呼ばれる存在。神を喰らうために大罪人として疎まれ、人々からは石もて追われる宿命にある青年であります。
普段は美女の姿をした付喪神・雛姫を連れ、己の糧となるケガレ神…は滅多にいないので小さな付喪神を求めて旅する彼が各地で出会う事件を描く全3話の作品であります。
第1話「神の声を聴け」は、そんな小太郎が、ヒロインとなる巫女の天音と出会うエピソード。大口真神を祀ってきた彼女は、何者かに社を壊され、周囲からは社も守れない無力な神と笑われながらも、神を守り、社を復興しようとするも、当の神は…という展開で、ケガレ神の存在と、それに抗する神喰らいたる小太郎の能力が描かれることとなります。
そして続く第2話「供物捧げ」では、人身御供を求める山神との対決が、第3話「神降ろし」では、かつて祀ってきた神を小太郎に喰われ、再び神を得ようと神降ろしを行わんとする神官との対峙が描かれます。
…と、エピソード的にはそれなりにバラエティがありますし、何よりも「神喰らい」という設定自体が――決して本作のみで見られるアイディアではないにせよ――魅力的な本作ではありますが、しかしその設定を生かし切れていないように感じられるのが、何とも残念なところであります。
個人的には、神を喰らわなければならなかった、そして今も神を喰らわなければ生きていけない――そして何よりも、それ故に人々から疎まれ、排斥される――小太郎に、そこまでの孤独の影を感じることができなかった点がもったいなく感じられたのですが…
それはあるいは、この世界において「神」というものがどれだけの存在感を持っているのか(=どれだけ人々に不可欠の存在として受け止められているのか)が、今ひとつわかりにくい点にも依るのかもしれません。
あるいは全3回のミニシリーズに求めるのは酷な点かもしれませんが、やはりもったいなく感じられてしまった作品ではあります。
「神喰らい カミグライ」(瀬上あきら 講談社少年マガジンコミックス) Amazon

| 固定リンク

コメント