« 「悲華水滸伝」第5巻 悲劇を描くための水滸伝 | トップページ | 「大帝の剣」第1巻 新たなる漫画版の幕開け »

2013.10.04

「モノノ怪 海坊主」連載開始 久方ぶりのモノノ怪、久方ぶりの薬売り

 本当に久方ぶりの「モノノ怪」、久方ぶりの薬売りであります。今からちょうど6年前に放映された時代アニメの佳品「モノノ怪」の漫画版が、「コミックゼノン」誌の最新号から連載開始されたのです。もちろん作画は、以前同じ薬売りを主人公とする「化猫」を漫画化した蜷川ヤエコであります。

 …といっても残念ながら完全新作ではなく、今回連載されるのはアニメのエピソードの一つ「海坊主」の漫画化。「モノノ怪」の二番目、薬売りが登場するものとしては三番目のエピソードであります(一作目は「怪 ayakashi」で放映された「化猫」。冒頭で触れた漫画版の原作です)。

 ここで「モノノ怪」という作品を振り返ってみれば、本作は謎の薬売りを主人公とした一種の妖怪退治物語。様々な形で人の世に現れ、怪事を起こすモノノケに対し、どこからともなく現れる薬売りの男が、謎に包まれたモノノケの形と真と理――いわば姿・正体・そしてその存在理由――を解き明かし、封じる姿が描かれるのですが…

 それ以上に強く印象に残るのは、その時代劇離れしたビジュアルの数々。大きくデフォルメされたキャラクターデザインのみならず、その背景美術やエフェクトに至るまで、本作の魅力として、強烈なインパクトがありました。
 しかしこれはアニメの動きと相俟ってこそ…といいたいところですが、この漫画版の作画を担当する蜷川ヤエコは、その点を軽々と乗り越えていくであろうことは、冒頭で挙げた漫画版「化猫」が証明するところであります。

 さて、その漫画版「海坊主」ですが、今回はまだまだ導入部、登場人物紹介の印象。江戸に向かう巨大船「そらりす丸」(しかし当時も思いましたが今見ても直球なネーミング…)に乗り合わせた人々――
 胡散臭い自称修験者の柳幻殃斉に、船の持ち主の商人・三國屋、旅の武士・佐々木兵衛、高僧・源慧と彼に仕える青年僧・菖源、「化猫」事件の生き残りである娘・加代。いずれも相当に個性的な面々であります。

 個人的に嬉しいのは、アニメ版でも大いに異彩を放っていた幻殃斉が冒頭から出ずっぱりのことで…主人公と言いつつもある意味傍観者に近い――何しろモノノケの形と真と理がわかるまでは本気(?)が出せないだけに――薬売りに比べると、黙っていても動き出す、いや全く黙らずに動き回る幻殃斉は、見ているこちらとしても大いに楽しいキャラクターであります。

 さらにまた、ビジュアルの方も期待通り。アニメでも印象的だったそらりす丸の内装を、この連載第1回ではカラーページで再現しており、この物語の舞台、海上の巨大な密室というべき異界を強烈に印象づけてくれたと言えましょう。

 そしてラストページに至り、ようやく我らが薬売りが登場するという引きも、ある意味お約束とはいえ気持ちいい。
 この先、アニメ版と何を等しくし、何を変えてくるのか…その点も含めて、アニメ初見時の驚きを思い出しつつ、この先の大波瀾に期待しているところなのであります。


「モノノ怪 海坊主」(蜷川ヤエコ コミックゼノン 2013年11月号~)


関連記事
 「モノノ怪」第一巻 そのままではなく、そのものの世界
 「モノノ怪」第2巻 漫画としてのモノノ怪世界
 今週の「モノノ怪」

|

« 「悲華水滸伝」第5巻 悲劇を描くための水滸伝 | トップページ | 「大帝の剣」第1巻 新たなる漫画版の幕開け »

コメント

アニメ製作にも色々ありますね。

そこでhttp://denki.txt-nifty.com/mitamond/2012/01/post-99f6.html?cid=82054126#comment-82054126にもコメントしました。答えにくかったらすみません

投稿: レベル | 2013.10.08 16:48

レベル様:
コメントをどうもありがとうございます。本来であればまずあちらの記事のコメントにお返事すべきなのですが、なんとお答えしようか正直なところ悩んでいるところではあります。しばしお時間をいただければと思います。
(アニメ製作については門外漢ゆえ、きちんとしたリアクションになるかは不安ですが…)

投稿: 三田主水 | 2013.10.09 00:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/13655/58291232

この記事へのトラックバック一覧です: 「モノノ怪 海坊主」連載開始 久方ぶりのモノノ怪、久方ぶりの薬売り:

« 「悲華水滸伝」第5巻 悲劇を描くための水滸伝 | トップページ | 「大帝の剣」第1巻 新たなる漫画版の幕開け »