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2013.11.05

「戦国武将列伝」2013年12月号(その二) 若き剣豪、その歩む先は

 前回の続き、「戦国武将列伝」12月号掲載作品の紹介であります。

「後藤又兵衛」(かわのいちろう)
 今回の舞台となるのは、備中高松城攻め。黒田官兵衛(又兵衛言うところの「黒官」)の策により、文句を言いつつも水攻めの準備に奔走する又兵衛の姿が描かれますが――今回の目を引くのは、やはり黒官が仰ぐ秀吉の存在であります。
 既存のイメージから、猿っぽさと可愛らしさを三割り増しにしたような秀吉の姿はそれだけでインパクト十分ですが、戦場に届いた本能寺の変の報を聞いてからのリアクションの触れ幅は、なるほど黒官が認めるのもわかる怪人ぶりであります
(秀吉が登場したであろう「信長戦記」を恥ずかしながら未読なのが悔やまれます)

 その一方で、その秀吉の口から、あの有岡城に幽閉されたエピソードを語ることで、飄々とした姿を見せる黒官の存外な骨っぽさを描くという手法もなかなかに巧みであります。
 と、肝心のタイトルロールが霞んでいるような気がしないでもありませんが、それは次回のお楽しみとしましょう。


「セキガハラ」(長谷川哲也)
 ついに諸将による石田三成襲撃が描かれる今回。史実では七将のところ、本作で三成を襲うのは加藤清正・福島正則・黒官なのですが…もちろんここは、黒官が思力を奪った武将たちの分もカウントしているのでしょう。
 それはともかく、本作の三成は未来視の力により彼らの襲撃は予想済み。正則は島左近が意外とあっさり撃退したものの、単身清正と対峙した三成は…
 今回語られる、清正が虎に襲われる予知を三成が黙っていた理由。清正が虎に襲われなければ、清正が異形と化すことも三成を恨むことはなかったわけですが――その理由は、未来視が絶対ではない、というより全てではない、ということを突きつけてきます。

 今回の思わぬ(?)窮地といい、未来視の穴、すなわち三成の人生の穴がいよいよ感じられてきたところですが、史実で窮地の三成を救ったあの男が、実に頭の悪くも豪快な登場をしたところで次回に続きます。


「獣」(森秀樹)
 残念ながら今回で第一部最終回。青年武蔵の彷徨を描いてきた本作ですが、ラストの舞台は関ヶ原の合戦――吉川英治の「宮本武蔵」の冒頭に登場した関ヶ原であります。
 そこで西軍に就き、ひたすら首狩りに暗い情熱を燃やす武蔵ですが…その前に現れたのは、何と父である新免無二斎。武蔵の実の母にして自分の前妻を死に追いやった父に対し、恨みの刃を向ける武蔵ですが、そこで父が語るのは、第1話で惨殺された武蔵の姉にして恋人にまつわる真実でありました。

 世の常から見れば常軌を逸しつつも、ある意味純粋だった武蔵の想い。それを打ち砕いたのは果たして誰だったのか。誰を恨めばいいのか。真実を知って父に首を差し出す武蔵ですが…と、その後の展開がこちらも愕然とするほど無惨、の一言。

 若き獣の道はいまだ無明のまま、ここで(第一部が)完というのは残念ではありますが、これまで女人の存在を通じて武蔵の道を描いてきた物語として、冒頭に登場した武蔵の姉を再び描いて終わるというのは、それはそれで首尾が整ったものではありましょう。


 と、その森秀樹は次号から「戦国自衛隊」(!)の連載を開始。さらに前号で読み切り掲載された楠桂「鬼切丸伝」も次号から連載ということで、ますますもって私好みになってきた「戦国武将列伝」。
 このままではほとんどの漫画を取り上げることになるかも…と思いつつ、それはそれでもちろん望むところであります。


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コメント

最近のリイド社の時代劇攻勢は凄いですね。でも勢い余って同じ戦国物でも「戦国の長縞GB軍」(日高建男 原案/志茂田景樹)を「コミック乱」で始めてしまってますが(笑)。

投稿: ジャラル | 2013.11.07 23:16

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