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2013.11.06

「帝都月光伝 Phantom of the Moon」 呪いの舞台と幻の歌声

 主役に抜擢された女優が次々と謎の不幸に襲われるという幻の舞台「宵の歌姫」を雑誌で取材することとなった御山さくら。さくらが担当する作家であり、月神に仕える戦士というもう一つの顔を持つ祀月令徒は、その背後に「敵」の存在を感じる。一方、さくらは公園で不思議な男の歌声を聴くのだが…

 戦前の帝都東京を舞台に、人の心に忍び寄る「堕ちた月の民」を狩る月神に仕える一族・祀月家と、彼らの戦いに巻き込まれた女性編集者・御山さくらの冒険を描く「帝都月光伝」の続編、シリーズ第2弾であります。

 自分が担当する人気作家・祀月令徒の元を訪れたところ、ライバル出版社の編集――というより令徒を一方的に慕う佐智枝と出くわしたさくら。おかしな成り行きから、彼女が追っているという舞台「宵の歌姫」を取材することとなったさくらですが、この舞台が実はとんだ曰く付き。
 かつて上演寸前までいきながら何故か中止となり、今その脚本が発見されて再演、いや初上演されることとなったこの舞台、主演女優が次々と不幸に遭うなど、芳しからぬ噂が相次ぎ、いったいどれが真実かわからないほどになっていたのでした。

 そんな騒動を追って忙しい日々を過ごす中、夕暮れの公園で美しい青年の歌声を聞き、言葉を交わすのですがの、青年は彼女に姿を見せることなく、そしてその声を聴いたのも彼女のみで――


 という本作、ヒロインが帝都を騒がす奇怪な事件に巻き込まれて…というシチュエーション自体は前作同様ではありますが、今回は雑誌編集者という設定を生かして、より主体的に物語に関わっている印象があります。
 さらに、彼女にのみが聴くことができる謎の歌声の存在を設定することにより、本作の事件に一ひねり加えると同時に、さらにシリーズ全体の謎にも繋がる展開を用意している点は、なかなか巧みなものだと感じさせられます。

 一方、そのおかげで(?)令徒の出番が減ってしまった感は否めませんが、今回はさくらへの想いが無意識に溢れてワタワタするシーンが面白かったので…というのはさておき、祀月家の本家の当主の登場で、祀月側にもドラマの展開があったのも面白いところでしょう(というか、その当主のおかげで令徒がワタワタしたわけですが…)。

 ライトノベル的な設定と見かけで損をしている部分はあるかとは思いますが、どのように結びつくかわからなかった数々の流れが結びつき、哀しい真実を浮かび上がらせる辺りの呼吸はなかなかのもの。
 今後の展開への引きも含めて、十二分に楽しませていただきました。


 もっとも(前回も申し上げましたが)やはりこの時代を舞台とする必然性に乏しいのがどうしても気になるところではあります。
 凌雲閣などこの時代ならではのランドマークは登場するものの、厳しいことを言ってしまえば、それを除けば現代でもやろうと思えばできてしまう話であって、その点だけはやはり気になってしまうのですが…これはまあ、特殊な読者のコメントではありますが。


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