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2013.11.15

「紅蓮楼 ヨコハマ居留地五十八番地」 手首と石とがもたらす因縁の果てに

 横浜税関の倉庫から、蝋漬けの干からびた手首が見つかった。さらに何者かが税関に忍び込み、その手首が納められた箱を盗み出してしまう。一方、「時韻堂」の芭介のもとには、若返りの力を持つという楽園石を探して欲しいという依頼が来ていた。二つの出来事は意外な形で結びつくことに…

 明治中期の横浜居留地に開かれた西洋骨董店「時韻堂」の主人・深川芭介と、彼の友人たちが奇怪な事件に挑む「ヨコハマ居留地五十八番地」シリーズの第3弾にして完結編であります。

 今回の事件の発端は、そそっかしい税関職員が倉庫の積み荷を崩した中から出てきた蝋漬けされ、干からびた不気味な手首。その手首を管理することになったのは税関職員で芭介の友人・田汲ですが、その晩に税関に何者かが忍び込み、手首の納められた箱を盗み出したこおで、彼は管理責任を問われることとなってしまいます。
 しかし、箱を盗んだと思しき男が何者かに殺害され、箱とともに海に浮かんでいたことから、事件は(田汲に責任を被せて)終わったかに見えるのですが…

 そして、芭介の方にも奇妙な依頼が。商売っ気があるのかないのか、飄々と「時韻堂」を営む芭介ですが、その職業と顔の広さから、度々奇妙なもの探しを依頼を受けることがあり、前作もそれが事件の発端となったのですが――
 今回の依頼は、かつて横浜で作られていたという、若返りの力を持つという謎の楽園石。なにやらいわくありげな客からの依頼を受けて調べ始めた芭介ですが、以来彼の周囲には怪しげな影が見え隠れすることに。

 手首と秘薬、一見全く関係ない二つの事件は意外な形で結びつき、芭介と田汲の共通の友人である税関職員・高澤も巻き込んで(というか彼も実はこの事件に大きな責任を持つのですが…)、事件はシリーズ全体のクライマックスへと突き進んでいくこととあります。


 今回の事件のキーアイテムの一つである手首の正体については、オカルト好きの方であればすぐにピンとくるかと思いますが、作中で芭介たちがその正体を探る手段が、シリーズではお馴染みのあの道具というのは、なるほど(いささか悪趣味かもしれませんが)これ以上ぴったりのものはなく、実に面白い。
 そしてその手首を横浜にもたらした存在も、ある意味実にメジャーではあるのですが、この時期の横浜であればあり得ない話ではなく、納得であります。

 もう一つの楽園石の件も含めて、それぞれの事件はそれほど複雑ではないのですが、そこに運命の悪戯と言うべきか天の配剤というべきか、様々な人間の思惑が絡んだ挙げ句に実にややこしいことになるという展開も楽しい。
 そしてシリーズ全体の幕引きとしても、なるほどこれならば仕方ない(?)という趣向で、まずは納得であります。

 本作のみならず、シリーズ全体を通して見ても、もの凄い傑作というわけではありませんが、安心して楽しめる作品であったと思います。


 …と、前作であまり安心できなかった男同士のいちゃいちゃ要素は、本作ではだいぶ薄くなった印象で、これはこれでバランスが取れたと言うべきでしょうか。
(芭介が「彼」を選ばなかったのは、今回の一件で人に迷惑をかけまくった制裁…というのはうがった見方に過ぎましょうが…)



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