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2013.11.03

「水滸伝外伝 浪子燕青」 見参、もう一つの燕青伝

 連載中に一部の水滸伝ファンを困惑させたwebコミック「水滸伝外伝 浪子燕青」が、ついに単行本化されました。連載開始時にも取り上げましたが、こうして完結したものを通して読んでみると…やはり色々な意味で印象に残る作品であります(ちなみに本作、BL要素ありなのでご承知置き下さい)。

 本作の主人公は、言うまでもなく浪子燕青。原典では天コウ星第36位・天巧星の好漢であり、浪子の名に相応しい伊達男であります。原典では北京の豪商・盧俊義にまめまめしく仕える番頭格だった燕青ですが、武術は達人クラスであるのみならず歌舞音曲にも優れ、各地の方言にも精通した――梁山泊の中でもチートクラスの好漢であります。

 が、本作で描かれる燕青は、原典とは大きく異なるキャラクターであります。本作の燕青は徽宗皇帝の男人後宮(何度見ても「ファッ!?」となるワードですな…)で寵愛される愛妾(?)なのですから…

 なるほど、燕青という好漢は、元々その盧俊義に献身的に仕えるという立ち位置的にそれっぽく見られがちなキャラクター。あの男臭い北方水滸伝ですら、(フェイクだったとはいえ)それとして描かれたのですから、ある意味梁山泊の中では一番違和感がない、とは言えますが…それにしてもあまりの直球ぶりであります。

 本作では、そんな彼が、籠の鳥としての日々を送る中、宮中に武芸師範としてやってきた謎の男・盧俊義と出会ったことから、思いも寄らぬ己の出生の秘密を知り、立ち上がる姿が描かれることとなります。
 この出生の秘密自体はなかなかに面白いものでありますし、徽宗の非道っぷりもここで際立つのですが…やはり「水滸伝外伝」を冠するのであれば、もう少し水滸伝的なくすぐりは欲しかったな、とは思います。
(このオチであれば、少しいじれば水滸伝本編に繋げられなくもないだけになおさら…)

 個人的にどうしても引っかかってしまったのは、何故燕青が盧俊義に惹かれたのかが今ひとつわからない点で、徽宗からそういう扱いを受け続けていたとはいえ、「なぜ男なんだ」という印象を受けてしまったのは、本作のような作品においてはいかがなものでしょうか。
(本作のような作品だから許される、と言ってしまえばそれまでですが…)


 とはいえ、バージョン違い水滸伝愛好者としては、その原典との違いが、もう一つの燕青伝としてそれなりに楽しめたのは事実ではあります。

 ちなみに燕青と盧俊義のほか、本作には戴宗と楽和が登場(燕順という名のキャラも出ますが…これはまあ同名別人ということで)。
 神行法と明言はされないものの高速移動を見せ、やたら悲惨な過去を背負った戴宗、笛使いのショタっ子の楽和と、それなりにキャラが立っていただけに(特に楽和の「だお」という語尾は、本当にそんな言葉使うキャラ初めて見た! と言うしかないインパクト)、それ以外の好漢も見たかった…という気がしないでもありません。

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