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2013.12.14

「大奥同心・村雨広の純心 2 消えた将軍」 久々の続編はあっさり目?

 村雨広ら大奥同心の活躍で精鋭を倒され、徳川家継暗殺を阻まれたた紀伊忍び。彼らの次なる手は、自分たちの手を極力汚さず、尾張忍びを操って家継襲わせることだった。家継の将軍宣下の日が迫る中、次々と迫る奇怪な忍びの魔手。大奥同心たちは、紀州への反撃を試みるのだが…

 風野真知雄の「大奥同心・村雨広の純心」、実に二年ぶりの続編であります。正直なところ、あまり間が開いたものでもう続編はないのかと残念に思っておりましたが、こうしてシリーズが再開したのは嬉しい限りです。

 さて、本シリーズは、徳川七代将軍・家継、そしてその生母・月光院を守るために結成された武術の達人たち――大奥同心が、奇怪な忍びたちと激闘を繰り広げる活劇であります。
 もちろん、新井白石の食客であり、塚原卜伝の流れを汲む新当流の達人である村雨広もその一人。しかし、彼にとっては、役目や白石の信頼もさることながら、月光院を護って戦わねばならない理由があります。

 それは、月光院こそが、かつて同じ長屋に育ち、互いに淡い恋心を持ちながらも引き裂かれた幼馴染みの後身であったこと――
 前将軍の側室、現将軍の生母となった彼女といまさらどうこうなるわけもない。しかしそうであっても、いやそれだからこそ、彼女とその息子を護らなければならない…そんな彼の切ない心が、サブタイトルである「純心」に表されているのであります。

 前作では紀州藩主・徳川吉宗が差し向けた異能の持ち主揃いの紀州忍びから月光院たちを守り切った村雨ですが、次なる敵は尾張忍び。紀州の次は尾張というのは、ある意味納得ではありますが――
 と思いきや、実はこれは、尾張忍びの総帥に術をかけて操った紀州忍びの総帥による企み。

 かくて月光院と家継を護る戦いは、大奥同心vs尾張忍び、そして彼らを操る紀州忍びと、三つ巴に。さらに大奥同心の仲間であるはずの月光院付きの大奥女中・絵島は、文字通り吉宗(!)と通じ合う仲で…と、幾重にも入り乱れた戦いは、家宣の将軍宣下の日にクライマックスを迎えることとなります。


 …と、今回もなかなかに起伏に富んだ趣向の本作なのですが、しかし実際に読んでみた印象は、正直に申し上げれば随分とあっさり目…といったところ。
 登場する忍びたちのユニークな秘術や、意外な事件の数々、そしてどこかペーソス漂う人間模様と、いかにも作者らしい要素が散りばめられてはいるのですが、個々の描写がさらりとしすぎているのが気になりました。

 特にクライマックスなど、相当に派手なことが起きているにもかかわらず、わずかな描写で終わってしまったのには少々驚かされました。
 厳しいことをいえば、設定したイベントを駆け足で消化した…という印象なのであります。


 が、ラストでついに描かれる村雨の秘剣・月光の剣の正体、これには心の底から驚かされました。
 いや、このロジックで秘剣を描いたのは、本作が初めてではないか…というレベルの技であり、いやこれは必見であります。

 そしてまた驚かされたといえば、ラストに登場するある勢力にも(秘剣ほどではないにせよ)また仰天。なるほど、登場してもおかしくはない勢力ではありますが、ここで登場するとは意外でありました。

 史実から考えれば、これからいよいよ苦しい戦いを強いられるであろう村雨たち大奥同心。この先の物語は、あまり間を置くことなく、読ませていただきたいものです。


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