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2013.12.25

「およもん いじめ妖怪撃退の巻」 子ども妖怪、真剣にコワイ妖怪たちに挑む

 常陽藩の別邸の宴に招かれた菊奴についていった福井淳之介の娘・咲月とおよもん。しかし別邸に常陽藩士が乱入、彼女たちは人質に取られてしまう。一方、淳之介の長屋を妖怪・わいらが襲撃、樽屋の子・お幾がさらわれてしまう。二つの事件の背後で暗躍する奇怪な忍びに挑む淳之介と中山安兵衛だが…

 2013年も妖怪時代小説で大活躍した朝松健の、今年最後の作品は、子ども妖怪「およもん」が活躍するシリーズの第二弾であります。

 西国で恐れられた正体不明の妖怪・およもん――相手が最も恐れる存在に化けるおよもんに出くわした者は、「およっ!」という最も根源的な恐怖の悲鳴をあげずにいられないというのですが…
 本作に登場するおよもんは、その恐ろしい伝承とは裏腹に、ふくふくとしたほっぺのかわいらしい幼児。ふとしたことから、そのおよもんと暮らすことになった裏長屋の浪人・福井淳之介が、およもんを狙うかつての主家の奸臣と対決したのが、前作「かごめかごめの神隠し」であります。

 さて、その続編である本作は、淳之介の隣人であり彼にベタ惚れの芸者・菊奴と、淳之介の娘の咲月、さらにおよもんが巻き込まれた立て籠もり事件と、淳之介の長屋から娘を攫って消えた妖怪の追跡と、二つの事件が描かれることとなります。
 一見関係のなさそうな二つの事件の陰に存在するのは、菊奴たちがその別邸で事件に巻き込まれた常陽藩の跡継ぎを巡る陰謀。常陽藩を狙う柳沢保明(朝松作品ではお馴染みの柳沢吉保の旧名)配下の妖忍・おとろし衆と彼らが操る妖怪に、淳之介や彼の親友・中山安兵衛は挑むのであります。

 権力者と結んだ妖術使いと彼が操る妖怪との対決というのは、作者の妖怪時代小説ではある意味定番の展開ではあるのですが、本作においては、その妖怪に挑む正義の味方が、見かけだけでなくメンタリティや行動まで幼児そのままのおよもんというのが、何ともユニークなところでありましょう。
 その実力を発揮すれば、いかなる妖怪も敵ではない(?)およもんですが、本作においては、お弁当目当てで菊奴たちについてきたのに立て籠もり事件のおかげで食べられずに力が発揮できなくて…という展開が何とも楽しい。

 そんなおよもんの可愛らしさの一方で、敵妖怪たちはビジュアルといい能力といい、実に洒落にならない、ホラーな連中揃い。
 その描写は妖怪というよりむしろモンスターやクリーチャーとも表すべきものであり――そして異界の存在であって、しかし同時に極めてリアルな質感を感じさせるもの。

 コミカルな味わいも強い作品ですが――作者の他の妖怪時代小説同様――描かれる怪異は真剣に恐ろしく、おぞましい。この辺り、そのギャップこそが、物語にリアリティと面白さを与えると熟知している作者ならではのさじ加減と申せましょう。
 そしてもちろん、そんな連中を理屈抜きの野放図なパワーで粉砕していくおよもんの活躍もまた、より一層痛快に見えるというものです。


 が、ここでうるさいことを言えば、そもそもの発端である立て籠もり事件、その犯人たちの目的から考えると――訴える相手が誰であれ、発端は藩の側にあるわけで――これはかえって逆効果ではないか、と感じられてしまうのが残念ではあります。
(さらにいえば、作中でも軽く突っ込まれているとはいえ、淳之介の周囲に関係者が集まりすぎという点も…)

 立て籠もりと妖怪退治など、なかなか面白い組み合わせが見られるだけに、この点は勿体なく感じられた次第です。


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