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2013.12.11

「黄石斎真報」(その一) 痛快な悪党どものお目見え!

 中華民国の成立から数年後の江南の地方都市・仙陽で発行される画報「黄石斎真報」。社主の賀黄石以下、真報を編集する一癖も二癖もある面々には、事件を記事にすると同時に、その裏を探っては副収入をせしめるという裏の顔があった。新人記者の林崇徳は、そんな先輩たちのやり方に翻弄されるが…

 武侠もの+ミステリという極めてユニークな「銀牌侠」シリーズを発表してきた秋梨惟喬が、新たに中国を舞台に描く連作集です。
 民国時代、国中が内憂外患に揺れるのとは距離を置いた地方都市・仙陽を舞台に、画報社に集う悪党たちが痛快な活躍を繰り広げる本作は、ミステリ・武侠・ガンアクション・コンゲームと様々な要素が絡み合った快作であります。

 社会問題や地元の出来事のみならず、怪しげな事件をも扱う黄石斎真報を発行するのは――
 仙陽の顔役の一人で車椅子の社主・賀黄石、黄石の妹の勝ち気な美少女・阿麗、石版の彫り師兼印刷技師の譚酒卿、優男ながら江湖の事情に通じた凄腕で今は記者の陸亜森、博覧強記の知識と恐るべき殺人術を持つ謎の居候・黒蝙蝠、そして彼らに翻弄される生真面目な新人記者の林崇徳といずれも個性的な面々。

 そんな悪党どもが、仙陽で起きる怪事件の謎を追って記事のネタにしつつ、裏で蠢く連中を時に叩き潰し、時に上前を跳ね、時に煽って大枚をせしめるというのが、本作の基本スタイルであります。

 そんな本作を構成する五つのエピソードを、一つずつ紹介しましょう。


「位牌発電」
 仙陽に現れた、先祖の位牌から電気を取り出すというふれこみで、代金を払って位牌を借りる一団。一見実害がなさそうな一団の陰には、意外な動きが…

 というわけで記念すべき第一話は、上に述べた本作のレギュラー陣とともに、物語フォーマットの紹介編とも言うべき内容。
 すなわち、常識では測れないような怪事件が発生し、その裏を黒蝙蝠と亜森が探り、崇徳が黒蝙蝠に振り回された末に、大活劇の後に真実が明かされる…という展開であります。

 たとえば「赤毛連盟」のように、珍商売の陰に実は…というパターン自体は珍しくないかもしれませんが、本作の場合はとにかく位牌から発電という突飛にもほどがあるアイディアに脱帽(そしてそれを画報の先駆である「点石斎画報」を引いてもっともらしく語るのも楽しい)。

 面白拳銃が乱舞するクライマックスのアクションも含めて、特殊な作品世界ながら、一気に引き込まれます。


「見鬼浄眼」
 追い剥ぎを働くという鬼を追うことになった崇徳。男を殺した上、どこかに消え失せた鬼の逃走経路にいたはずの見鬼の老人は、犯人を見ていないというのだが…

 タイトルの見鬼浄眼とは、中華伝奇ものではお馴染みの、この世ならざるものを見ることができるという青く輝く目のこと。
 この目を持った占い師の老人がキーマンとなる今回は、スケール的にはだいぶ小粒なのですが、前話とはまた別のベクトルで奇怪であり、そして20世紀とはいえ、前近代的な怪談の存在を許容する本作の世界観がよく出ていると感じます。

 正直なところ、謎解き自体はバカミス一歩手前で、肩すかしの感は否めないのですが、そのトリック(?)が成立する理由が、この世界観と密接に結びついているのは評価するべきでしょうか。


 以後、次回に続きます。


「黄石斎真報」(秋梨惟喬 講談社) Amazon
黄石斎真報 (文芸第三ピース)

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