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2014.01.12

「大江戸恐龍伝」第2巻 龍と金、とけゆく謎の先

 全5巻で現在も刊行中の夢枕獏の大作「大江戸恐龍伝」の第2巻は、ほとんど江戸を舞台としつつも、どんどん物語は広がり、いよいよ物語を覆う謎の霧も少しずつ晴れていくことになります。

 大坂で、かつて竜宮から持ち帰られたという龍の掌の化石と謎めいた絵文字、そしてキンナブ(金鉱石)の存在を目の当たりとした平賀源内。
 鉱山の発掘やエレキテルの復元等に惜しみなく己のあふれ出る才を注ぎつつも、ままならぬ浮き世のあれやこれやに流されていた源内は、化石などとともに存在しながらも、何者かに奪われたという絵文字の書き付けを入手し、その解読に挑むこととなります。

 一方、商館長に従って江戸に現れたオランダ人ツンベルクも、そのキンナブにまつわる何ごとかを知っている様子。
 さらに行人坂の大火の背後で暗躍していた盗賊・火鼠一味も奇怪な動きを見せ、龍と金を巡る事件は、予想を超えた動きを見せ始めるのですが――


 冒頭で述べたとおり、ほとんど江戸から動くことなく展開していく第2巻の物語。そこで描かれるのも、基本的に史実における平賀源内の動きを忠実に追っていったものとなります。
 …が、もちろん本作はそれだけで終わるわけではありません。史実の合間に次々と虚構を織り交ぜ、徐々にその虚構の度合いが強まっていく――言うまでもなく本作におけるそれは龍と金にまつわる数々の出来事でありますが、巨大な謎として第1巻で提示されたそれが、次第にその姿を明らかにしていく様は、やはり心躍るものがあります。

 特に今回印象に残ったのは、かつて竜宮に行って帰ってきたという男の手記にまつわる謎解きであります。
 奇怪な絵文字で構成されたその手記の解読の件は、有り体に言ってしまえばポーの「黄金虫」なのですが、しかし本作でその趣向が取り入れられているというのは、全く予想していなかっただけに嬉しい驚きです。

 そして解読されたその内容たるや…こちらも定番の題材ではあるのですが、やはりこの物語で描かれると意外な取り合わせにドキリとさせられるようなもの(そして、夢枕作品お馴染みの長大な過去話に突入か、と思いきや、今回は序章のみというのが心憎い)。


 果たしてこの展開が、どのように龍の物語と結びつくのか…と思いきや、後半で登場するある人物により、全てが――特に、物語全体の冒頭で描かれた、生きた龍の存在に――繋がっていくことになります。
 源内もついに龍と金を――そしてそれが眠るという南海浄土・ネリヤカナヤへ向かうこととなり、まだ巻数でいえば半分も行かぬうちに大きな展開を見せる本作。

 これまで実の中の虚であったものが、おそらくは虚の中の実へと逆転していくであろう中、いよいよ全貌が現すであろう物語で何が描かれるのか。最終巻までの目次を見れば、否が応でも期待は高まるのであります。


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大江戸恐龍伝 第二巻


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