« 「読楽」2014年1月号 「時代小説ワンダー2014」(その2) | トップページ | 「時代活劇画伝 斬」 「PEACE MAKER鐵」「曇天に笑う」ファン必読の一冊 »

2014.01.06

「天下一!!」第6巻 そして彼女の覚悟の行き着くところ

 タイムスリップした女子高生が織田信長の小姓に!? とキャッチーながらシリアスな物語を展開してきた「天下一!!」もついに最終巻。元の時代に変えるため…いや愛する人を守るため、本能寺の変を回避するための最後の奮闘が始まります。

 現代から戦国時代にタイムスリップしてしまったヒロイン・武井虎。彼女の前に現れた謎のウサギ男の提示した元の時代に帰るための条件とは、信長を本能寺で生き延びさせること。
 かくて現代に帰るため、いやそれ以前にこの時代で生き延びるために奮闘する中、信長の小姓として頭角を現していく(?)虎ですが、いつしか同僚である森蘭丸とラブラブ、いやそれどころかお腹には子どもまで…

 という風雲急を告げるなか始まった最終巻ですが、もう冒頭から急展開の連続。虎の正体が暴かれてしまうのか、蘭丸との仲はどうなってしまうのか、他のタイムトラベラーの動向は、そして何よりも、本能寺の変は起こるのか…
 これまで積み上げられてきた物語が、一気に動き出す様は壮観の一言であります。

 そしてその中で注目すべきは、彼女が戦う理由の変遷でありましょう。
 はじめは現代に帰るために本能寺の変を回避しようとしてきた虎。そのために信長に近づいた彼女ですが、しかしそれが結果として彼女の心を変えていくこととなります。

 そう、いまや彼女が戦う理由は、現代に帰るためではなく、愛する人を、森蘭丸を生き延びさせること。言うまでもなく史実では信長とともに本能寺の炎の中に消えた蘭丸、彼を生き延びさせ、ともに生きること…もはや現代に帰ることを捨てた彼女の決意は、この巻でこれ以上なく明確に示されることとなります。
 そしてクライマックスで描かれるのは、覚悟を決めた彼女の最後の戦いなのですが…

 しかし、本能寺の変を回避するということは森蘭丸を生かすことであると同時に、彼女が未来に帰る条件でもあります。
 どう転んでも蘭丸とは(そして一歩間違えば彼女自身の命と)悲しい別れにしかならないのでは、とここ数巻はハラハラさせられどおしでありました。

 そして迎えた結末は――もちろんここでは触れませんが、良い意味で開いた口が塞がらない幕切れ。
 こんなのありか!? いやこれもありか…いやこれ以外のオチは考えられないという結末であります。

 色々と矛盾やパラドックスはありますし(あれの正体があの人物、というのは素晴らしいどんでん返しでしたが、冷静に考えると疑問点だらけに…)、何よりもこの先どうするんだろうという気持ちにはなりますが、それも含めてのこの物語。
 虎の破天荒な戦国ライフの先にこの結末があったと思えば、それも大いに納得でしょう。

「まだまだ どんどん行こかァ」という作中の言葉がそのまま当てはまる、素晴らしく解放感のある結末でありました。


「天下一!!」第6巻(碧也ぴんく 新書館WINGS COMICS) Amazon
天下一!! (6) (ウィングス・コミックス)


関連記事
 「天下一!!」第1巻 ギャップを越えて生き延びろ!
 「天下一!!」第2巻 異なるもの、変わらないもの
 「天下一!!」第3巻 彼女のリアリティは何処に
 「天下一!!」第4巻 彼女が歴史を変えるわけ
 「天下一!!」第5巻 リア充パワーは歴史を変えるか!?

|

« 「読楽」2014年1月号 「時代小説ワンダー2014」(その2) | トップページ | 「時代活劇画伝 斬」 「PEACE MAKER鐵」「曇天に笑う」ファン必読の一冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「天下一!!」第6巻 そして彼女の覚悟の行き着くところ:

« 「読楽」2014年1月号 「時代小説ワンダー2014」(その2) | トップページ | 「時代活劇画伝 斬」 「PEACE MAKER鐵」「曇天に笑う」ファン必読の一冊 »