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2014.01.07

「時代活劇画伝 斬」 「PEACE MAKER鐵」「曇天に笑う」ファン必読の一冊

 昨年末、「時代活劇画伝 斬」というムックが発売されました。連載再開が決定した黒乃奈々絵「PEACE MAKER 鐵」と、アニメ化が決定した唐々煙「曇天に笑う」の新作を中心とした一冊であります。

 「PEACE MAKER鐵」の方は、約3年前に完結した「油小路篇」に続く新章(そしておそらく最終章)である「北上篇」の序章であります。
 史実にあるとおり、敗北を重ね、蝦夷地に敗走していく幕府軍。そこに加わることを望んだ最後の新撰組隊士の一人・田村銀之助は、死神と恐れられる一人の青年と出会うことに――

 言うまでもなく、この青年とは本編の主人公である市村鉄之助。しかしかつて輝いていたその瞳は、今は感情を見せず黒く沈み、平然と戦場で人の命を奪うようになっていました。
 油小路の戦いから蝦夷地敗走の間には、幾つもの戦いがあったことは言うまでもありませんが、この序章はそれの間をいったん飛ばして、ある意味結末を先に見せるという手法。そしてそこに新たな視点として登場するのが、かつての鉄之助を思わせる少年・銀之助というのも心憎い(にしても史実とはいえ出来すぎのネーミングではあります)。

 この間のエピソードはいわゆる鬱展開の連続。その結果が今回登場した鉄之助であるわけですが、正直なところ油小路篇の時点でかなり精神的にキツい展開だっただけに、個人的に戦々恐々としている状態ではあります(しかもインタビュー記事を見る限り、作者は大いにやる気であります)。
 しかしそれだけに、本作でなければ描けない物語が必ずあるはず。作者が逃げないのであれば、もちろんこちらも逃げるわけにはいきますまい。


 一方、「曇天に笑う」の方は、外伝が一挙に二話、さらにミッシングリンクであった本編の三百年前を描く「煉獄に笑う」と、豪華三本立て。

 外伝の方は第一話で本編終了の一年後の登場人物たちの姿が、そして第二話では本編開始十年前、曇三兄弟の長兄・天火と彼の仲間たちの青春が描かれることとなります。
 ある意味ファンサービス的な内容ですが、第一話では原作終盤で消息不明になって(まず大丈夫とはいえ)心配していたあの人物が元気にデレる姿が描かれ、また第二話では設定的にかなり重要と思われながら出番が少なめだった芦屋の存在をフォローしているのが嬉しいところであります。

 そして「煉獄に笑う」の方は、何と石田三成視点で描かれる物語となる模様。島左近や羽柴秀吉なども顔を見せ、かなり正当派の(?)時代伝奇活劇となりそうな印象です。
 本編の方では歴史上の有名人物が岩倉具視くらいしか登場しなかったため、この辺りは最初は少々意外には感じました。
 が、冷静に考えれば物語の舞台は琵琶湖畔。琵琶湖畔に城を持っていたといえば石田三成…というわけで、ここで三成が登場するのはむしろ自然と言うべきでしょうか。

 物語の方はまだまだプロローグというべきか、今回描かれるのは三成が忌み子と周囲から厭われる曇神社の双子と出会う辺りまでなのですが、三成が求めるのが「髑髏鬼灯」なる実にいい雰囲気のアイテムであったり、本編では地域住民のアイドル的存在だった曇神社の人々が正反対の扱いとなっているのも面白い。
 何よりも、ラスト直前の見開きページで、いずれも一癖も二癖もありげなキャラクターたちがシルエットで登場する場面が最高に格好良く(この辺り、非常に舞台劇的)、本編との関係を抜きにしても先が大いに気になる作品であります。


 その他、両作品のコラボギャグあり、それぞれの作品の四コマ&コメディ篇(本編が本編だけに、ピスメの方は相当に切ないのですが)ありと、相当に充実した内容の本書。

 いくつか難を言えば、本書がアニメイトでしか手に入らないこと、両作品の続きがいつから読めるのか(そしてどこで読めるのかも小さくしか)表示していない点はありますが、両作品のファンであれば手にとって損はない…というより必読であるかと思います。


 …ちなみに「煉獄」の曇神社の双子、名前の初出は四コマの方ではありますまいか。

「時代活劇画伝 斬」(マッグガーデン)

関連サイト
 公式サイト

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