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2014.02.02

「軍師 黒田官兵衛伝」第1巻 地味かつ馴染みのない世界を面白く

 先日より黒田官兵衛を主人公とした大河ドラマが始まりましたが、今回取り上げるのは同じ黒田官兵衛を主人公とした四コマ漫画。描くは「信長の忍び」で歴史四コマ界に躍り出た重野なおきとくれば、そのクオリティは約束されたようなものであります。

 さて、その黒田官兵衛を描く本作の始まりは、播磨の小寺家に仕える彼が、織田と毛利の間で揺れる主君を説き伏せ、織田家につこうとする時点から始まります。
 時は桶狭間の戦から十五年後、天下布武に向け、武田家をも破った信長が騎虎の勢いにあった時期。しかしその勢力はようやく近畿を出て中国地方に差し掛かったくらい、まだまだ中国・四国には強豪ひしめき合う時期でもあります。

 本作は、作者が同じであり、(年代こそ少しずれてはいるものの)時代も同じ、信長・秀吉・竹中半兵衛と重なる登場人物の造形も同じということもあって、「信長の忍び」とは姉妹編――見ようによっては続編的作品であります。

 しかし本作の主人公たる官兵衛はあくまでも軍師であり、天下取りを直接目指す武将とはいささか異なる立ち位置にあります。
 さらに物語開始の時点では地方の大名いや小名の陪臣という立場。その生涯がよく知られた信長に比べれば、知名度も違えば(こういう言い方が適切かわかりませんが)スケールも違う。

 上で述べたように、この巻でまず描かれる官兵衛の姿は、信長に誼を通じるために奔走する姿であり、地味かつあまり馴染みのない(≒わかりにくい)世界のお話ではあるのですが…

 しかし、そこをわかりやすく、かつ楽しくドラマチックに描くのが作者のセンス。この辺りは「信長の忍び」で証明されている点ではありますが、本作においても、もちろんそれは健在であります。
 黒田家の副業(?)が目薬作りであったこと、珍しく側室を置いていなかったことなどをベースにキャラクターをコミカルに膨らませつつ、そのキャラクターで極めて真面目に歴史を描く。
 そんな重野節ともいうべき作風は、むしろ信長よりも官兵衛を描く際に、より効果的に作用しているようにすら感じられるのであります。


 官兵衛が主人公ということで――周囲の人物からその危なっかしさが何度も指摘されてはいるのですが――いささか格好良い人物に描かれすぎのような印象はありますが、それはやはり彼がタイトルロールである以上、やむを得ないでしょう。
(その辺りは、主人公でありつつも傍観者的立ち位置でもある「信長の忍び」の千鳥とは異なる点でしょう)

 物語はこの巻のラストで早くも官兵衛の生涯最大のピンチともいえるあの事件に突入。どうにも四コマギャグに絡めにくそうなあのエピソードをどのように描いてくれるのか、期待しましょう。


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コメント

連載では、いきなり「お前は小早川隆景や竹中半兵衛のように(真の軍師)はなれない!」と宣言されてしまい、精神的にもピンチですからね~。

投稿: ジャラル | 2014.02.05 20:59

ジャラル様:
うっ、先のネタバレ禁止です(笑)
それはさておき、直接的に戦うわけではない軍師という存在の性格上、そうしたキャラクターの内面を掘り下げていく方向に行くのかもしれませんね

投稿: 三田主水 | 2014.02.16 20:31

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