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2014.02.23

「水滸伝」第20話「妾宅で婆惜を殺める」

 さて、ドラマ「水滸伝」第20話は、前2回に引き続き、宋江と閻婆惜の物語。周囲の人々もも含めて、決定的にボタンを掛け違えてしまった二人の関係は、ついに悲劇的な結末を迎えることになります。

 雷横の賭場(…を持っているという設定なのですね、ドラマ版では。日本の岡っ引き的)で、閻婆惜が不義を働いているという男と出会った雷横と朱仝。男に金を掴ませて黙らせたという二人からそれを伝えられた宋江は、閻婆惜の家に足を向けるのですが…
 そこで彼が見たのは、どう見ても何かの合図であろう、窓に赤い布を出している閻婆惜の姿。しかしそこで踏み込むでもなく、黙って立ち去る途中、手にしていた土産の品を投げ捨てるというのが、またこの人らしいというか何というか。

 しかしその晩、密かに閻婆惜の家から抜け出した張文遠の前に立ち塞がったのは…朱仝と雷横! 問答無用で張文遠を引っ担いだ二人は、賭場の奥の、金を払わない男たちを処分してきたという部屋に引きずりこみ、彼を天井からぶら下げます。
 この脅しの前にあっさりと口を割った張文遠が、ペラペラと二人の関係を白状するのを壁越しに聴いていたのは宋江。

 どうするか問われた宋江が「今回は見逃す」と答えたのに意外な顔をした朱仝が、それでは命は取らない程度に痛めつけましょうというのに「任せる」と宋江が頷くというこのシーンはえらい怖い。
 処分云々は、張文遠を脅すための方便だと最初は思いましたが、この辺りの会話を見ていると、どうも本当だったんじゃないか…という気にもなってきます。そして何より、そういう物騒な会話を平然と交わす三人を見ていると、シチュエーションこそ違え、こういうことを普段からやってきたのかな、宋代の胥吏怖いな…と、妙なところで感心してしまいました。

 さて、この辺りの場面は全てドラマオリジナルの展開ですが、その後宋江の前に劉唐が現れて…というのは原典どおり。
 前々回は戸惑っていた晁蓋も結局頭領になったらしく、宋江(と朱仝&雷横)に百両持ってきたという劉唐に、やんわりと断りを述べる宋江は、しかし原典よりも説得力のある対応で、小心さよりもむしろ慎重さを感じさせる演出なのにはちょっと感心。

 しかし金を受け取らず梁山泊入りも断り、「地位や名誉を求めているわけではない」と言う宋江が、劉唐がではなにをと問い返したのには答えない(答えられない?)のも興味深い場面でありました。

 そして劉唐と別れた後、ついに閻婆惜の元に足を運ぶ宋江。彼は怒りを見せたり咎めたりすることなく、しかし離縁せざるを得ないと告げるのですが――しかし、全ては宋江の気を引くためであった閻婆惜にとっては彼が怒らないのもまたいらだちの種。
 涙ながらに自分の真情を訴える彼女の姿は間違いなく美しくも悲しく、そして「見知らぬ人は助けても自分には会いに来ない」という言葉が、痛切に響きます。

 それでも別れるという宋江に対し、閻婆惜は屋敷や家具、着物などは自分のものにさせてくれと言うのですが――原典では彼女の強欲さを示すこの言葉が、ここでは内容は同じながら、全く別の意味に聞こえるのには唸らされます。
「私が身に着けている服や使っている物はあなたが買ったけれど返さなくていいと」という言葉の切なさ、そしてその想いに気づくことなく肯んじた宋江に対する「あなたは本当の好漢だわ」という言葉の痛烈な皮肉たるや…

 そこで(別れるにしても)優しく抱きしめてやればよいものを、邪険に振り払って出て行く宋江。しかし劉唐が持ってきた手紙を閻婆惜の家に置き忘れるという大失態。
 ここで原典通りに彼女が見つけて、返す返さないの押し問答になるわけですが、しかしその内容が、原典は百両よこせ/いやないだったのが、こちらでは正妻にしてくれ/それ以外ならというのにまた驚かされます。

 しかし、その果てに待つものは原典と同じ――揉み合ううちに短刀で閻婆惜を刺してしまう宋江。ここで閻婆惜が最後の息で「構わないで逃げて」と、最後まで宋江のことを案じているのが泣かせます。


 前回の感想でも述べましたが、結果的には(表面的には)原典どおりの展開を描きながらも、しかしその内実はむしろ正反対というべき閻婆惜の「純愛」を描いたこの三回。
 単に原典をなぞるだけではない、このドラマ版なりの「水滸伝」との向き合い方が感じられた、見事な内容だったと思います。


 さて、閻婆惜を殺してしまった宋江は…というところで次回に続きます。


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