「5 Ronin」 時代の狭間をさまえよえるマーベルヒーローたち!?
最近マーベルのアメコミを色々と読んでいるのですが、その中で、おっと思わされたのが本作。17世紀の日本を舞台に、ウルヴァリン、ハルク、パニッシャー、サイロック、デッドプールを主人公とした全五話のミニシリーズであります。しかし手に取ってみたその内容は、色々な意味で意外なもので…
読めば読むほど世界観の多様さに驚かされるマーベルの世界ですが、本作の舞台となるのは、通常の作品の舞台となっている世界(の過去)とは全く異なるパラレルワールド。
時は関ヶ原の戦の直後、東軍側についたある大名に対し、彼によって運命を狂わされた五人の「浪人」が、各話の主人公となります。
この五人の主人公は、いずれもメジャーなキャラクターではありますが、しかしパラレルワールドの物語だけあって、原典の設定を生かしつつ、完全にジャパナイズされたものとなっています。
すなわち、
ウルヴァリンは、殺されても再び出現する手甲鈎を武器とした男に。
ハルクは、平穏を望みつつも短気で怒ると見境なく暴れ出す僧兵に。
パニッシャーは、妻子を失い、火縄銃を手に次々と仇を襲う復讐鬼に。
サイロックは、英国人と日本人の間に生まれた美しき花魁に。
そしてデッドプールは、他の四人の前で謎めいた、狂ったような言動を見せる、編み笠で顔を隠した乞食坊主に――
それぞれ、原典を知っていればニヤリとできるようなアレンジが施されて登場するのであります。
が――実は本作の世界観は、超人的能力や超能力といったものが全く存在しない世界。
そのため、ウルヴァリンの不死身にも種が存在いたしますし、ハルクも緑色の巨人に変身したりしない。デッドプールも黄色の吹き出しで喋ったりはしないのです。
(そんな中、設定・言動とも一番原典に近いパニッシャーは、髑髏らしき紋が入った着物を羽織り、馬上筒的な火縄銃を手にした姿がある意味原典以上に格好良い)
そんな「リアル」な世界で展開される物語はこれも地に足がついたものであり、ビジュアル面でも、さすがにところどころおかしな部分はあるものの、大阪城でウドンを食べているなどということもなく、相当に真っ当に描かれています。
日本の非時代劇作品でもたまにある、パロディ的な時代劇編ではなく、真っ正面から「時代劇している」作品なのであります。
もっともこの辺りはどう考えても痛し痒しではあります。そんな本作には、アメリカのファンが期待していたであろう「日本っぽさ」も、そしてこちらが期待していたアメコミらしい破天荒さも、どちらもありません。
その意味では実に地味な作品ではあり、厳しいことを言ってしまえば――個々のエピソードの中で断片的には感じられるものの――本作を日本の時代劇とする必然性に疑問符がつくかもしれません。
しかし、本作における「浪人」観――戦国時代と江戸時代、すなわち混沌と秩序の狭間で主を失い、自らの依るべきものを失った者(その意味ではサイロックも立派に「浪人」であります)、というそれは、日本の時代もの、特に最近の漫画などでもなかなか見られない視点を感じさせるものであります。
その意味では、不死身とならんで(かつての)もう一つの個性であった記憶喪失(すなわちアイデンティティの喪失)を、時代劇的ながらも一歩間違えれば味気ないものになりかねない不死身の種明かしと絡めたウルヴァリン編は、特に印象深い作品であります。
と、時代ものファンとしては見るべき点も少なくないものの、本作はやはり、万人にお勧めできると言い難いものがあります。
特に最終話、これまでの物語を考えれば当然こうなるだろうというこちらの予想と期待を完全に裏切った展開は本当にカタルシスに欠けて――これはこれである意味無常感溢れていてよいとも言えますが――こればかりはどうにかならなかったのかな、と感じます。
クリエイターの熱意と愛情を強く感じるだけに、肩に力が入りすぎてしまったのかな、という印象もあり、個人的には嫌いではない作品なのですが――
アメコミ好きでかつ時代劇好きであれば、色々と感じるところがあるであろうことは、間違いありません。
「5 Ronin」(Peter Milliganほか Marvel) Amazon

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コメント
この際Marvelには「5 Precure」を作っていただきたいと、思うものであります。
投稿: ちゅるふ | 2014.02.11 14:57
ちゅるふ様:
「Precure」ってなんだろう…と真面目に検索してしまったではないですか!(笑)
投稿: 三田主水 | 2014.02.16 20:32