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2014.02.10

「武器で読む八犬伝」 武器に見る物語世界の豊かさ

 今月の22日、三重県で「海峡を越える忍者 日韓をつなぐ」という、荒山徹・金時徳ソウル大学教授・吉丸雄哉三重大学准教授のトークイベントが開催されます。その関係で吉丸氏の著書を調べてみたところ、八犬伝ファンとして大いに気になるものが。それがこの「武器で読む八犬伝」であります。

 本書の内容はタイトルそのままと申しましょうか――曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」全編でどのような武器・武術が登場するかを調べ上げ、以下の章題の通り列挙したもの。
1 槍などの長柄の武器
2 刀剣のいろいろ
3 名刀列伝
4 鉄砲
5 格闘・捕縛
6 弓矢などの飛道具

 例えば一口に刀槍と言っても様々な種類・用法があることは言うまでもありませんが、しかし読み手としては、何となく脳内でその大分類でまとめてしまい、その分類で理解しがちなもの。
 しかし、本来であれば物語の中でわざわざ武器についてその細かい種別が描き分けられているのであれば、それはそこに作者の意図があるはず。本書はそんな考えてみれば当然のことを、改めて教えてくれるのであります。

 ちなみに本書においては、全てではないものの、珍しい武器・武術については(馬琴の作品に限らず)他の先行する作品や馬琴が参考にしたであろう書物を挙げて解説しています。
 その中で個人的に感心したのは、金砕棒、そして大斧について、「太平記」における記載例があったという点。この二つの武器は、あまりに日本の合戦で使用されるイメージがなかったために、勝手に「水滸伝」由来のものと思い込んでいただけに、大いに感心いたしました。

 閑話休題、そんな本書を読んで一番感心させられたのは、その登場する武器・武術のバリエーションの豊富さであります。
 なるほど八犬伝は完結までに28年間、全部で98巻106冊の大作であり、そこに登場する武器・武術が多いのはむしろ当然かもしれません。

 …が、本書が教えてくれるのは、上で触れたような刀槍のようなある意味メジャーな武器のバリエーションのみならず、そうした中に収まらないような武器の数々――石礫や十手、包丁やさらには穀竿(いわゆるフレイル)に至るまで、様々な武器が、武器として使われるものが登場するということ。
 これは裏返せば、作中でそれだけ様々な人間が武器を用いるということであり、そしてさらにいえば、作中に登場するのが、単に武士階級の人々に留まらないということの証でもあります。

 どうしても八犬士を中心として、武士たちの物語という印象のある八犬伝ですが、しかしそこに登場し、活躍するのは――その源流である水滸伝と同様に――様々な身分・職業の人々であるということを、本書は再確認させてくれました。

 初めは意表をついた切り口に感じられましたが、なるほど、このような形でも八犬伝の物語世界の豊かさを証明することができるのか、と大いに感心した次第です。


「武器で読む八犬伝」(吉丸雄哉 新典社新書) Amazon
武器で読む八犬伝 (新典社新書21)

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