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2014.02.09

「メテオラ」 魔星から切り込む異形の新水滸伝!

 連載開始時にも紹介いたしましたが、琥狗ハヤテ(朱鱶マサムネ)の水滸伝漫画「ネリヤカナヤ」が、リブートされた「メテオラ」。この「メテオラ」の最初の単行本が、このたび発売されました。林冲が、魯智深が、旧来のファンにとってはお馴染みの、しかし全く新しい姿で登場いたします。

 かつて単行本で3巻刊行されながらも惜しくも途絶していた「ネリヤカナヤ」。豹子頭林冲を主人公にしながらも、従来の水滸伝とは一風変わった展開を見せていた同作ですが、この「メテオラ」においては、さらに意外かつ独創的な物語が描かれることになります。

 東京開封府の王進将軍の近侍頭として知られる凛々しき若武者・林冲。赤子の頃に王進に拾われ、実の子のように愛されてきた彼には、しかし王進らごく親しい者しか知らぬ大きな秘密がありました。
 それは彼には、尻尾があること――

 実は彼こそは伝承に言う不吉な災いの星、魔星(メテオラ) を宿した者。そしてある事件をきっかけに更なる異形に変化した彼は、寺の菜園番の破戒坊主・魯智深にその姿を見られてしまうのですが…

 ほとんど全ての水滸伝物語に登場し、多くの作品で主役級の活躍を見せる豹子頭林冲。原典等において、彼のその「豹子頭」の渾名は、頭の形が豹を思わせるところから由来しておりますが、しかし本当に林冲を豹頭に変身するヒーローとして描いたのは、(「ネリヤカナヤ」でもなかった)本作のみのアイデアでありましょう。

 あるいはそれは作者自身の方向性、志向によるものかもしれません(近い時期に刊行された本作と「ねこまた。」「もののふっ」の三作品で「三者合同モフモフ企画」なるものが行われているくらいですから…)。
 しかし作者の筆力と水滸伝に向けた愛情が合わさった時そこに生まれるのは、単に語呂合わせで意表を突いただけのものなどではなく、全く新しい角度――「魔星」から水滸伝という物語に切り込んだ作品なのであります。


 原典の冒頭で封印を解かれ、梁山泊の豪傑百八人に転生したと語られる百八つの魔星。しかしそれ以降作中で語られることは少なく、その知名度とは裏腹に、魔星は謎めいた存在に留まります。
 本作はそれに人ならざる魂、人々に仰ぎ見られながらも、同時に畏れられ、嫌悪されるモノとしての意味を――そしてそれは原典の豪傑たちの存在そのものではありませんか!――与えるのです。

 そして魔星を宿し、魔星の力を持つのは林冲だけではありません。魯智深も、そしてこの巻で早くも登場した大刀関勝も、同じく魔星を宿した者なのであります。


 …が、味方がいれば敵もいる。魔星の存在を知る王進や関勝を恐れさせる「敵」――魔星としての魂を喰らう強大な敵もまた、本作には存在します。
 現時点では明かされないその正体は誰なのか(もっとも、ほぼ間違いなく梁山泊の宿敵とも言うべきあの男でありましょう…)、そして魔星と敵の存在が、林冲をどこに導くのか…現時点ではまだわからないことだらけではありますが、しかしそれは同時に水滸伝ファンにとっては楽しみが多い、という意味でもあります。


 唯一気になっていたのは本作に巻数表記がない点ですが、今後も作品は続く様子。それであればこれからも、そして今度こそ、林冲の、この水滸伝の向かう先を楽しむことができるというもの。
 解き放たれた魔星のごとく復活したこの物語を、この先も大いに期待しているところであります。


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