「水滸伝」第22話 「武松 虎を打つ」
さて、また少し間が空いてしまったドラマ版「水滸伝」の感想ですが、前回魯智深と楊志の姿が描かれたのから再び場面は変わり、物語のフォーカスは宋江へ。しかしそれも一時のこと、いよいよ人気者の武松のエピソードが今回から始まることになります。
閻婆惜を殺した罪を償うため、父に別れを告げた後、潔く出頭した宋江。その宋江が再び実家に戻ってくるのですが、それは今度こそ流刑地に向かうためでありました。
周囲の人々はもちろんのこと、上司からも信頼されていた宋江は、流刑の沙汰は下ったものの、役人も連行にも来ないという実質放免状態。
しかし宋江はそれをよしとせず、弟の宋清をお供に、自ら流刑地である江州に向かうのでありました。
原典では宋江は出頭せず、朱仝雷横に見逃されて宋清をお供に高飛びする…という展開で、その辺りを改変したおかげで、護送役人もなく自主的に流刑地に向かうという前代未聞の状態となったわけですが、これはこれでまあ、宋江の並外れた潔さ(そしてもちろん閻婆惜を殺した悔悟の念)の表現ではありましょう。宋清はとばっちりのような気もしますが…
それはさておき、その途中、かねてより文を交わしていた柴進の屋敷を訪れた宋江は、門を入るか入らないかのところで、早くも地べたに座っていた青年の足に躓きます。
このずいぶんと濃い風貌ながら、咳を連発する青年こそが武松。その短気さ(病もあってのことかと思いますが)から周囲からは疎まれていた様子ですが、足を突っかけた相手が宋江と知って大喜びであります。
旅の途中、三日熱で足止めされていた武松ですが、憧れの宋江に会えた上にかいがいしく看病までしてもらい、さらに義兄弟になろうとまで言われて有頂天、すっかり元気になるのでありました。
そして宋江らとともに柴進邸から旅立った武松は、宋兄弟と別れ、一人旅へ――
ということで、ここから始まる武松伝。この先はほぼ原典に忠実な展開となります。
まずは景陽岡の麓で、異常にノリのいい給仕がいる酒場で酒をしこたま飲んだ武松は、人喰い虎が出るという給仕の止める言葉も聞かずに景陽岡に向かいます。
給仕の言葉は嘘ではなく、ここで武松は人喰い虎に襲われるのですが――ここが色々な意味で今回のハイライト。
山中を舞台に、武松と人喰い虎の一対一の激闘が長々と展開するのですが、第1話に登場した虎があまりにもしょっぱいCGだったので心配していたら…
登場した虎は本物なのですが、なかなか両者が一つの画面に収まらない! アップやカット割りを多用することにより、どこまで両者を画面に収めずに戦っているように見せるかというスタッフの技に、別の意味で手に汗握ります。
さすがにそれだけで済ますわけにもいかず、武松と虎の取っ組み合いもあるのですが――ぶっちゃけ、中身が入っていない虎相手に戦ってみせる武松役の役者さんも本当に頑張ったと思います。こんな風に斜に構えて見るのが申し訳ないほどに…
何はともあれ、真っ正面からのダッシュからスライディングで虎の腹の下に潜り、無防備な腹に蹴りを入れてひるんだところに石で殴りまくるという武松のラフファイトの前に、80年代の香り漂う戦いは決着するのでありました。
と、ここで舞台は代わり、饅頭を作っている夫婦が…原典読者であればおわかりのように、夫は武松の兄・武大、そして妻は潘金蓮――原典最大の悪女として名を残すあの美女であります。
本人にはまったくその気はないにも関わらず、その美貌から勤め先の主人とその息子から言い寄られ、それを疎まれて主人の妻から邪険に扱われた末に、町一番の醜男に娶される…主の息子からも言い寄られるという点を除けば原典どおりの展開ですが、しかしビジュアルで見せられるとこれはあまりに切ない。
たった二人の寂しい婚礼の末、周囲の目を避けて寂しく暮らす二人の姿を描いて、次回に続きます。
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