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2014.03.27

「妖怪博士の明治怪奇教授録」第2巻&第3巻 彼が妖怪を否定する理由

 たなかかなこの明治妖怪活劇漫画「妖怪博士の明治怪奇教授録」の第2巻、第3巻が同時発売となりました。残念ながらこの第3巻にて完結となりますが、二人の主人公のドラマはきっちりと描かれ、まずは大団円であります。

 本作の主人公は、文明開化の明治の世に、妖怪を求めて日本各地を往く東日流六平太博士と、助手の泊瀬武。しかしこの二人、師弟といいつつもその求めるところは正反対なのであります。
 東日流博士は妖怪の存在を迷信として否定する、自称迷信バスター。一方の武は妖怪を実在のものと信じ、出会うことを夢見る少年…そんな凸凹コンビが各地で出会う妖怪絡みの事件を、時に頭脳で、時に力で解決する様が、本作では描かれることとなります。

 本作で描かれる事件の大半は、一見完全にこの世にあり得べからざる怪異、妖怪の力によるものに見えますが、しかしその陰で糸を引くのは、現実の人の存在。東日流博士はそれを暴くことによって、妖怪の存在を高らかに否定することになるのですが…
 しかしその一方で、さらにその奥に存在するのは、紛うことなき妖怪――東日流博士の、そしてそのモデルたる井上円了の言葉を借りれば「真怪」であり、それを武が一種の法力でもって粉砕するというのが、本作の基本パターンであります。

 実は武が幼い頃に病で死にかけたところをある大妖怪に救われ、以来妖怪の存在を信じることとなった少年。その大妖怪も勾玉の形で常に彼の側に在り、妖怪退治には活躍することになります。
 …つまり、妖怪を否定し、迷信を打破するという東日流博士の論は、すぐ隣にいる武の存在によってすでに根底から否定されているのであり、その点が本作の面白さであると同時に、何ともすっきりしない、どっちつかずな印象に繋がっていたのですが――

 しかし、その印象は、第2巻に収録された、東日流博士の過去を語るエピソードにおいて、完全にぬぐい去られることになります。

 過去の合戦で死んだ者の亡霊たちを浮かび上がらせる古戦場の火。故郷の長岡でその怪火を通じて描かれるのは、戊辰戦争の中で官軍に町を蹂躙され、怒りと恨みに燃える六平太少年の姿であります。
 怨念に取り付かれたかに見える六平太少年。そんな彼に対し、その父は「お前は妖怪になるのか」と問いかけるのですが――

 「妖怪」とはいったい何者なのか。そしてそれに対する六平太少年の答えは…その内容はここでは伏せますが、なるほど、この明治の世において、あれほどまでに東日流博士が迷信を打破し、妖怪を否定するのは、この想い故であったか! と感心すること請け合い。
 東日流博士に対する印象が180度変わる見事なエピソードで、このためだけでも本作を読む意味があった…というのは少々オーバーかもしれませんが、それだけ印象的な内容であります。

 そしてここで示される妖怪概念を踏まえつつ、その先で展開されるのは、武の信念を巡る物語。
 武とよく似た気配と力を持ち、しかし正反対とも言える酷薄な心根を持つ少年の登場により、武は自分の妖怪に対する想いは果たして正しいのか、過酷な現実を次々と突きつけられることとなるのであります。

 ここに至り物語は、妖怪というより神々の対決とも言うべき内容に突入していくのですが――この辺りは少々性急、というより(ラスボスのデザイン感覚も相まって)、妖怪バトル漫画になってしまった印象で、それなりに面白くはあるものの、ちょっと残念に感じてしまったのですが…

 しかしここにおいても輝くのが東日流博士の存在。武とは別の場所で、全く別の戦いを続ける彼が最後に掴んだもの――それはいささか強引と感じられなくもないのですが、しかし確かに彼が妖怪を否定した先にあるものであり、そしてそれこそが武の戦いに終止符を打つものであった、というのは、やはり実に美しい展開でしょう。
 そして本作はやはり、二人が揃ってこその物語であるのだ…と再確認させられるのであります。

 先に述べたとおり、終盤の展開は性急ではありますし、やはり全3巻というのはやはり短いのですが――しかしその中でも描かれるべきものは確かに描かれた、と言うことはできるでしょう。


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