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2014.03.14

「陰陽師 瀧夜叉姫」第4巻 様々な将門の真実に

 「陰陽師」シリーズ最大の長編「滝夜叉姫」の漫画版の刊行も快調に進み、これで早くも4巻目。前巻でついに名前が現れた平将門について、この巻ではいよいよ彼を巡る過去の物語が描かれることになります。

 盗らずの盗人や奇怪な疾病、何者かの呪詛など、都の貴族たちを次々と襲う奇怪な事件。その怪事に見舞われた貴族たちに共通するのが、20年前の平将門の乱に関わったことだと、晴明たちは気付きます。
 かくてこの巻で描かれるのは、夢枕作品名物とも言うべき長い過去編。源経基が、藤原秀郷が語る平将門の姿は、歴史的事実と、伝承に残る奇怪な物語――曰く鋼の体を持っていた、曰く六人の分身がいた等々――と、その両方に現れるものであり、そしてその両方を結ぶものであります。

 関東の民のためにやむなく決起した有情の武将か、己の野望のために大乱を引き起こした無情の謀反人か――経基と秀郷と、二人の語る中にも現れる不思議な矛盾を解くキーパーソンとなるのは、将門に付き従っていたという謎の男・興世王…

 というわけで、ここで本作の最重要人物たる興世王が登場するわけですが、その不気味さはなかなかよく描かれているものの、あまりにも分かりやすすぎる悪人、外道になってしまっているのは(原作を踏まえているとはいえ)いささか残念なところではあります。

 しかしその一方で感心させられたのは、晴明と博雅が、将門の旧主である藤原忠平の元屋敷を訪れるくだりです。

 同一人とは思えぬ様々な顔を見せる将門の、どれが本当の顔なのか? それを知るために既に廃屋となって住む人もない屋敷で、晴明の術により博雅が見た将門の姿は――
 というこの展開は原作にあったものか失念しましたが、かつての主従の姿が幻の中に浮かび上がり、そして博雅と晴明が彼らと触れ合う中で、将門の「真実」を知るという描写は、なかなかに感動的であります。

 意地悪なことを言えば、この時点で将門が実は…と、ある程度見えてしまうのは、物語の興を削ぎかねないのですが、しかし様々な将門像が現れる中で、本作の中で最もピュアでニュートラルな存在である――それは一種、読者の分身的立場であることを含んでいるのですが――博雅の目を通したものが描かれるという構造は悪くないと感じます。


 さて、そんな「真実」が描かれたものの、物語にはまだまだ謎が多く存在します。
 特に平貞盛の病に関わっていたあの人物が…というのは、そこで実に「らしい」顔を見せる蘆屋道満との対峙もあって面白い。
 この辺りの、様々な勢力がそれぞれの思惑を秘めて絡み合う姿は、伝奇ものの魅力の最たるものだと常々思っているのですが、やはりこうして見ると実に良いものです。

 そしてその中で晴明と博雅がどんな役割を果たし、何を見るのか…原作を既に読んでいてもなお、楽しみになるのです。


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