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2014.03.11

「さんばか」第二景 対決、同時代人作家?

 戯作者志望の少年・菊池久徳と、ちょっと変わり者の読本マニア三人娘が風呂屋と江戸の出版界を舞台に繰り広げる騒動を描く「さんばか」の第2話が発売されました。今回のタイトルは「犬と泡!」。読本で犬、とくれば思い浮かぶ人物は…

 というわけで、今回登場するゲストキャラクターは滝沢興邦。後の滝沢馬琴、曲亭馬琴であります。

 久徳が、三人娘の一人のサクに半ば強引に同行される形で顔を出した勤め先の大書店・耕書堂。その主・蔦屋重三郎の前で、身振り手振りはおろか、衣装扮装まで変えて、自分の作品「椿説弓張月」の構想を熱弁していたゴツめの男が滝沢興邦であります。
 背水の陣で戯作者を目指すという興邦に対し、同じ戯作者志望である久徳は、方向性(?)の違いから険悪なムードに。
 そしてその一方で、興邦の持ち込み原稿を読んだサクは――


 自分の無知を棚に上げて申し上げるのも恐縮ですが、刀を取って戦った戦国武将などはともかく、歴史上の文化人たちの誰と誰が同時代人か、というのは案外に気付きにくいものではないでしょうか。
 この辺りは、日本史の授業などで、文化史は文化史として、その時代の最後にまとめて出てくるのも原因の一つではないかと思いますが…

 それはさておき、いささかねたばれ(といっても史実ですが…)になりますが、二人の経歴を比べてみれば、馬琴は1767年生まれでデビューするのは1791年、弓張月は1807年の発表。一方、久徳は1776年生まれ、デビューするのは1794年、彼の代表作の発表は1809年(ちなみに作中の年代は1790年)。
 こうして見ると、生まれた年こそ一回り違えども、完全に同時代人であり、今回のような展開も無理がないことがよくわかります。

 しかも同時代人とはいえ、作風・題材についてはまったく正反対に近い二人が顔を合わせれば、なるほどこういう展開もあるなあ、と感心した次第です。
(そしてサクの口を通して、馬琴の作風について客観的に、そして容赦なく評価が下されるのも楽しい)


 しかし今回、この調子だと風呂屋が出てこないのでは…いや、別に見たいというわけではないのです。そういうわけではないのですが、しかしやはり本作の売りの一つであるわけで、それが出てこないのはいかがなものか――
 などとしかめつらしく思っていたところ、もちろん風呂屋のシーンもばっちり。しかも、風呂屋にはつきもののあるアイテムが、見事に印象的なビジュアルを描き出す結末もなかなかに美しい。
 あの経験が後にあの作品に、というのは有名人の駆け出し時代を描いた作品ではほぼ鉄板ですが、なるほど、これは素直に感心できる展開です。

 前回はキャラクター紹介篇という趣でしたが、今回からがいよいよ本番ということでしょうか。
 江戸の出版界というのは、実は小説の世界では最近比較的メジャーな題材ではありますが、しかしこうしてコミカルかつお色気ありの漫画という形で展開されるというのは、本作くらいのものではありますまいか。

 次は誰が顔を出すのか、楽しみなのであります。


「さんばか」第二景(たみ&富沢義彦 脱兎社) Amazon
さんばか 2


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