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2014.03.18

「ひゅうどろ 大江戸妖怪事典」 大江戸妖怪収集活劇再び

 自称・日本一の妖怪学者の指導のもと、「大江戸妖怪事典」の完成目指して江戸の怪奇事件に立ち向かう少年少女の活躍を描く「てれすこ 大江戸妖怪事典」の続編が発売されました。その名も「ひゅうどろ」、今回もオモシロ怪奇な妖怪譚が展開されることになります。

 蘭方医の卵の美少年・栗木菊之助と、その幼なじみの霊能少女・美江が、ある日、不思議な空間に迷い込んだことがきっかけで出会った謎の蘭学者・稲毛外羅(その正体は平賀…)。
 驚くべき発明を次々としながらも、人格的にはちょっと問題ありの稲毛先生の目的は、様々な妖怪を集めた「大江戸妖怪事典」の完成――それも文章や図版ではなく、本物の妖怪を先生発明の機械でお札にして貼り込んでしまおうという、本物の(?)妖怪事典であります。

 しかも先生の発明でお札になった妖怪は、後で自在に呼び出してその力を借りることが可能。かくて先生のペースに巻き込まれた二人は、妖怪のお札と、かわいい子供姿の霊獣・お咲の助けを借りて、同じく妖怪を集める間の抜けた悪党三人組を向こうに回し、江戸中を駆け巡ることに相成ります。

 そんな設定の本シリーズですが、第二弾の本作も、前作同様の全三話構成。
 妻に先立たれた商人が、天井裏から現れる奇怪な妖怪につきまとわれる「いつも見ている」。
 相撲取りなど、力自慢ざ通りかかると力比べを挑む謎の妖怪との対決編「うしろの力自慢」。
 近づく者を次々と怪奇現象が襲い、次々と奇怪な妖怪が現れる四谷の廃寺の謎を描く「来るなの寺」。

 ここではあえて述べませんが、どのエピソードにも、副題と並んで妖怪の名前が記されているため、妖怪好きの方であれば、作中で描かれる怪事の背後に何ものがいて、何をしているのか、かなりの程度で予想は可能でしょう(もっとも、三話目はそれは不可能なのですが)。

 しかし、それでも本作がその興を削がないのは、これも前作同様に、作中で起きる怪事の、そして登場する妖怪の描写が、どこまでも丹念に、真っ正面から為されているからにほかなりません。
 作者のファンには今さら言うまでもないことではありますが、元々作者は、日本のオカルトホラー界の第一人者。本作は確かにコミカルな要素も大きい物語ではありますが――「オドロ怪奇」という、作者のファンには懐かしいワードも登場し――登場する怪異については、あくまでも真摯なのであります。
 そしてそれが、コミカルな要素をより高めていることは言うまでもありません。


 ただ残念なのは、主人公たちのキャラが弱いのも前作どおりという点でありましょうか。
 悪玉トリオが好き勝手に暴れ回る分、優等生である主人公たちが割を食ったというところなのですが、設定が魅力的なだけにこれが実にもったいない(さらに言えば、彼らのアイテムが強すぎるのもまた、皮肉なことに彼らのキャラを弱くしているという印象もあるのですが…)。

 できれば、短編連作ではなく、一冊丸ごとの長編で、妖怪と(悪玉トリオと)の全面対決を描いて欲しいな、と個人的には思うのですが…


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