「あやかし秘帖千槍組」(その二) 共存でもなく、戦いでもなく
グループSNEの友野詳による異能の美女三人が大活躍する妖怪時代小説「あやかし秘帖千槍組」の紹介、後編であります。
さて、本作の持つ数々のユニークさの最たるものは、もちろん主役の美女三人の存在でありましょう。
何よりも、彼女たちの持つ能力、使う技が実に独創的で面白い。ビジュアル的な組み合わせとしてはある意味定番の三人ではありますが、その能力は実に独創性溢れるもの揃い。
特にお漣の能力など、時代もの抜きにしても、その弱点や由来も含めてちょっと類例を思いつかないとてつもないもので――いや、いささか大げさかもしれませんが、ここだけでも読んだ甲斐があった、という印象です。
しかし本作は、彼女たちの痛快な大暴れを描くのに留まりません。それに加えて描かれるのは、人間と妖怪――重なりあいながらも相容れぬ二つの世界に生きる者たちの陰影に富んだ物語であります。
共にこの世(たまにあの世もいますがまあそれはさておき)に生きる者たちでありつつも、その姿から、その能力から、ある時は恐れ、ある時は憎しみ、ある時は蔑みの感情を抱きあう人間と妖怪。
様々な形でその両者に立つ千槍組の面々は両サイドからその感情を向けられる存在と言えます。
そんな彼女たちの戦いの目的は、ある意味極めて現実的であります。共存共栄ではなく、相互不可侵…とまでは言わないものの、互いを傷つけあうことなく、互いに存在しあう関係――
実はこのスタンスは、人間と妖怪が共存する、あるいは人間と妖怪が滅ぼし合う内容が大半の妖怪時代劇では比較的珍しいものであり、その点にも本作の独自性があると言えます。
(この辺りは、あるいは、いやおそらく、作者も参加しているライトノベル/TRPGシリーズ「妖魔夜行」「百鬼夜翔」を踏まえたものでありましょう)
確かに、百点満点とは申しません。本作のウリとも言える、時に講談調ともなる文章には気恥ずかしさを感じる部分がないとは言えませんし、敵の陰謀が妙に入り組んでいる(そしてその点を律儀に全て解説する)部分も、好き嫌いが分かれるのではありますまいか。
しかしその点を差し引いても本作が魅力的なのは、これまで縷々述べてきたとおり。
これまでの作品同様、またモノノケ文庫に先の楽しみな作品が一つ増えた――そう言い切るのに、何のためらいもないのであります。
これは蛇足。本作は、作者自身が述べているように、妖怪時代劇版「チャーリーズ・エンジェル」と言うべき作品なのですが――
千槍、ちやり、チヤーリー…あ。
「あやかし秘帖千槍組」(友野詳 廣済堂モノノケ文庫) Amazon

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