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2014.03.12

「紳堂助教授の帝都怪異考 三 狐猫篇」 魔道紳士、狐と猫の怪に挑む

 大正時代の帝都東京を舞台に、美貌の帝大助教授・紳堂麗児と助手のアキヲが数々の怪事件に挑む「紳堂助教授の帝都怪異考」の第三弾が刊行されました。今回のサブタイトルは「狐猫篇」――そのタイトルのとおり、狐あるいは猫にまつわるバラエティ豊かな怪異譚を集めた一冊であります。

 その美貌で数々の女性と浮き名を流す紳堂助教授のもう一つの顔は、古今東西の魔道に通じた魔道紳士ともいうべき一種の超人。その顔を知る友人知人から、あるいはこれまでに彼に助けられた警察から、次々と持ち込まれる怪事件を鮮やかに解決していく…
 そんな彼の姿を、助手である篠崎アキヲ――少年の姿をしていますが実は女の子――の目から描くのが、本シリーズの基本スタイルです。

 さて、3巻目となり、すっかり物語のスタイルも定着した感のある本シリーズですが、それゆえか本作では安定感を感じさせる、「地に足のついた怪異」ともいうべきユニークな物語が展開されていきます。

 紳堂の親友である堅物軍人・美作の従妹を襲った狐憑き事件の顛末を描く「従妹殿御用心」。
 以前解決した事件に登場した令嬢から。王子稲荷で出会ったという美貌の青年探しを依頼される「逢瀬は神域で」。
 帝都で相次ぐ、化け猫によるものだと噂される猟奇殺人事件。事件の背後に蠢く恐るべき敵に、紳堂と意外な戦士たちが挑む「Cath Palug」。
 ある屋敷の使用人に憑いた狐を巡り、紳堂が宿敵とも言うべき女怪と対決する「魔女」。
 冒頭に述べたように、狐と猫というモチーフがあるとはいえ、簡単に紹介しただけでもわかるように、どのエピソードも実にバラエティ豊かな内容。
 日常の謎/怪異にまつわるものもあれば、スケールの大きな伝奇活劇ありと、エピソードごとの振れ幅が大きいのは本シリーズの特徴といえるかもしれませんが、先に述べたとおり、シリーズを重ねることで固まってきた紳堂の、アキヲのキャラクターが中心にあることで、どんな事件であっても紳堂とアキヲの物語として安心して楽しめるのは実に大きなアドバンテージと感じます。
(むしろ本作の場合、このバラエティ豊かさが逆にバランスの良さに繋がっているのも面白い)

 そんな本作の中でやはり最も印象に残るのは、帝都を舞台とした妖怪(猫)大戦争ともいうべき「Cath Palug」でありましょう。
 巨大な猫により次々と人々が惨殺され、さらに何故か人々の前から全ての猫が姿を消した帝都で繰り広げられる決戦の姿は、凄絶にしてどこかユーモラスな、まさに本作でなければ読めないような物語でありましょう。
 特にある人物(?)の出自たるや、さすがにこちらの予想外で、融通無碍なファンタジーを大いに堪能させていただきました。


 ただし、あえて一点注文をつけるとすれば、前半の二つのエピソードで、アキヲがあまりにも鈍感過ぎることでしょうか。
 はっきり言ってしまえば、読者には明白な内容をアキヲの鈍感さで物語を引っ張っている点があったのが、いささか気になったところではあります。
 もちろんこれまでも、アキヲの鈍感さがドラマを生んだエピソードもあり、一概には言えないのですが…

 いや、彼女があまり敏感になっても困るところもあり、その点も含めての本作の面白さとするべきかもしれませんが。


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