「Tomb of Dracula Presents Throne of Blood」 戦国武将吸血鬼の肖像
以前にも述べましたが、最近暇を見て色々とアメコミを読んでいます。実際に読んでみたら想像以上に世界観も多様でキャラクターのバリエーションも豊富だったのに感心したのですが、今日紹介する「Throne of Blood」に登場する戦国武将吸血鬼コドウ・ライゾウもそんな中の一人です。
「Throne of Blood」といえば、黒澤明の「蜘蛛巣城」の英語版タイトルですが、本作はそちらとは何の関係もなく、ホラーコミック「Tomb of Dracula」(ちなみに映画化もされた「ブレイド」はこのシリーズの出身)の番外編的な短編コミック。
戦国時代から現代まで生き続けるライゾウの出自を語る物語であります。
16世紀の日本、コドウ家の嫡男であったライゾウは、弟で剣の達人であるリュウヘイとともに、恐怖で周囲を支配する暴虐の武将を討ちに向かいます。
百姓に化けて敵陣に忍び込んだ二人は首尾良く武将を討ったかに見えたのですが…油断した近づいたところを武将に噛みつかれてしまうリュウヘイ。今度こそ相手の首を落とし、帰国する二人ですが、リュウヘイが徐々に異常な行動を取るようになります。
実は二人が討った武将は、不死の生命に憧れて異国の吸血鬼に噛まれ、自らも吸血鬼となった存在。その事実をライゾウが知った時には既に遅く、リュウヘイのみならず、彼の父や家臣、そしてライゾウの愛妻までもが吸血鬼と化していたのでありました。
城に火を放ち、心を鬼にして吸血鬼と化した者たちを討っていくライゾウ。そして炎の中でリュウヘイを討ったライゾウですが、彼もまた、吸血鬼と化した妻に噛まれていたのでした。
自らも吸血鬼と化し、天涯孤独の身の上となったライゾウ。自裁することもできず、彼はただ一人何処かへ去って行くのでありました――
アメコミで描かれる日本というと、どうしても身構えてしまうところがありますが、本作はかなり真面目に描かれた部類。というよりむしろ真面目すぎて地味に感じられるのが難点ではありますが…
(もっとも、ライゾウの妻の名前がスズメなのはまだいいとして、ライゾウたちが討った武将の名前がJakkaruなのはさすがにどうかと)
むしろライゾウが活躍するのは(作中の時間では)この後であります。修行の末、吸血鬼としての衝動を克服した彼は人間の味方となり、同様な立場の仲間たちを集めてチームを結成。怪物化してカルパチアで暴れ回るハルクを迎え撃ったり、吸血鬼化したX-MENの一人に修行をつけたりと、脇役ではありますが、なかなか良い立場で登場しております。
さらにいえば、戦国時代から生きているという長命ぶりを生かし、(もちろん後付けではありますが)第二次大戦期にヨーロッパでトゥーレ教会と戦ったり、50年代にアフリカでプロフェッサーXと出会ったりと、一風変わったリリーフぶりを発揮しているのも面白いところであります。
…もっとも、デビューから数年しても個人シリーズはもちろんのこと、出番も数えるほどしかないのは正直なところ。吸血鬼というのはあの世界では一つの個性ではありますが、それなりに使いどころが限られることもあるのでしょう(そしてライゾウさんビジュアル的にはかなり地味ということもあり…)。
しかしやはり時代伝奇者から見れば、戦国武将出身の吸血鬼というのは実に美味しい存在。いつどんなキャラクターが脚光を浴びるかわからない世界だけに、これから先もその動向に注視したいところであります。
「Tomb of Dracula Presents Throne of Blood」(Victor Gischler Marvel「Fear Itself: Dracula」所収) Amazon

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